男の痰壺

映画の感想中心です

映画2010

しあわせの雨傘

★★★ 2011年1月8日(土) 梅田ガーデンシネマ1 オゾンが撮る以上、類型的「女性自立」譚にはなるまいと思ってはいたが、何十年もの自分史を全否定し、元サヤへの未練を一顧だにしない媚び皆無の冷徹が正直俺にはキツかった。ディスコのお茶目や回想のエロな…

ソーシャル・ネットワーク

★★★★★ 2011年1月22日(土) TOHOシネマズ梅田3 裏切りの帰結としての孤独なぞという今更テーマは眼目ではないのであろう。ヴィスコンティ以来とも思える階級社会での軋轢への俯瞰的アプローチを快楽リズムに乗った編集技巧と合致させ得た到達点。状況の…

ザ・ウォーカー

★★★★ 2011年2月12日(土) トビタシネマ 運ぶ男と奪う男。逃げる女と追う男。シンプルなテーゼを事後の虚無的な荒廃世界に描きマカロニウエスタンの復刻として堂に入っている。ヒューズ兄弟の演出はそれなりに抑制され、あざとさ臨界ギリギリ線上。老夫婦宅…

ザ・タウン

★★★★★ 2011年2月19日(土) 梅田ブルク7シアター5 今更な題材だが真摯な思いがあれば物語は人を打つ。多くの友の屍を乗り越える主人公に葛藤があまり無いようだが、一方では恋焦がれた女への矜持を現代感覚に立脚させたニューハードボイルド。その平衡感覚…

ゴダール・ソシアリスム

★★★ 2011年2月19日(土) 第七藝術劇場 世界の片隅で誰からも見向きもされぬ年寄りの繰言めいた能書きを垂れても、ゴダールだからと受け入れられてしまうのは役得でしかない。正直つまらんのだが、豪華客船の異世界的深遠を切り取るデジカメの色彩美とブロウ…

冷たい熱帯魚

★★★★★ 2011年2月19日(土) シネリーブル梅田1 正直黒沢・神楽坂・梶原のミニスカ揃い踏みな女趣味だけで充分堪能してしまうが、この世界構築への確信的腹の据わり方には陶然とする。ダメなもんは破壊し尽くせというアナーキーな主張を一転ピンキーバイオレ…

ヒア アフター

★★★★ 2011年2月26日(土) 梅田ブルク7シアター7 拠り所を失い彷徨う魂のミクロな邂逅の物語がスペクタクルを混じえた巨視的視座で語られつつ、でも、あくまで奥床しいあたりがキェシロフスキ的とさえ思わせる。達観したかのような新たな境地を垣間見せた…

ウルフマン

★★★ 2011年3月12日(土) 新世界国際劇場 辛うじてホプキンスが変奏を担うが、所詮何の新味もない企画であり、又かのリック・ベイカーフィーチャーの変身も今更。ロンドンのCG多用もうんざりだが、美術は特筆だと思うし、それを明晰な光で捉えた撮影も良な…

トゥルー・グリット

★★★★ 2011年4月9日(土) TOHOシネマズ梅田10 対話による交渉を主なモチーフとした前半は微妙な間も活き、俯瞰のロングで処理される待ち伏せの静謐の妙も冴える。しかし、プロットを支配したニヒリズムは後段では失われ規定の安寧なモラリズムへと収束…

ザ・ファイター

★★★★★ 2011年4月9日(土) 梅田ガーデンシネマ1 彼女は彼氏に、妻は姑に、弟は兄貴に、皆腹に溜めた蟠りを吐き出す物語であり、それが人間関係を壊すのでなく礎となり相互信頼を築いていく。これは理想郷。遠慮と躊躇が支配する多くの都市型コミューンが崩…

SOMEWHERE

★★ 2011年4月9日(土) 梅田ガーデンシネマ1 ガーリー作家の描く「男」の喘ぎの何たる形骸。空っぽバカ男の涙の1人よがりを如何にもと描くソフィアの男を見る眼に人事ながら心配を覚える。シークェンスごとに詠嘆的間合いがあるが空転し詩的でもない。エル…

死にゆく妻との旅路

★★★ 2011年4月23日(土) 高槻セレクトシネマ2 ブイブイ言わせてるときだと鬱陶しいとしか思えなくとも、クスブって受けに立ち行き場を無くしたときから最上の連れ合いとなる。孤絶した刹那な世界に埋没し破滅へ向かう旅路への仄甘い誘い。後暗い共鳴を覚え…

ブラック・スワン

★★★★ 2011年6月19日(日) MOVIXあまがさき2 高度に精緻な達成とは思うが意外性が無いし、純粋に性的な鬱屈のみで極めた『反撥』なんかと比べると夾雑物があるだけエッジが効かない。大体に安直な黒鳥たるべき資質だが、それをクリアできた劇的クライ…

スカイライン 征服

★★★ 2011年6月25日(土) 梅田ブルク7シアター7 サバケた割切りに多少は好感を持ったが、この程度のいかがわしさでは全く足りない。『宇宙戦争』な背景に『マトリックス』敵キャラ群舞の廉価さへの懸念は終盤の空軍とのバトルCGの凡庸さでピークアウト。…

一枚のハガキ

★★★★ 2011年8月27日(土) テアトル梅田1 ツンデレ大竹の硬く閉じた心の融解の過程は少々強引な感が無くもないのだが、豊川との2人芝居の濃厚は有無を言わせぬ快楽がある。怒りや哀しみを呑んで腹にためる新藤演出の定型詩的な簡潔と枯淡の心地よさ。ラス…

スリーデイズ

★★★ 2011年10月8日(土) 大阪ステーションシティシネマ6 ご都合主義とまでは言わずとも場当たり的だし、主人公の疑心や善悪への葛藤の詰めが甘く釈然としない。アクション監督としてのハギスは若干ベタとも思うが、父と息子や夫と妻の間の熾火のような心の…

電人ザボーガー

★★★★ 2011年10月22日(土) 梅田ブルク7シアター4 オリジナルに敬意を表しつつパロディとして再構築する技量に於いて前人未到の域に迫っている。一本調子でダレる井口だが2部構成でクリア。若手2人のド暑い好演と変態老優2人の間で分が悪い板尾を巨大愛…

わたしを離さないで

★★★★ 2011年10月22日(土) 新世界国際劇場 従容として受け入れることを彼ら彼女らに強いる享楽の世界の存在は隣接しつつも余りに遠いという隔絶の絶対性を堅持した妥協のない演出。単線構造は悪くもないのだが、しかし思うのだ。鎮魂だけが回答なのかと。反…

ゴーストライター

★★★★ 2011年10月8日(土) シネリーブル梅田2 前半の元英首相が逗留する米国東岸の別邸での展開が図抜けていて、複数の人物の出入りと窓で隔絶された屋内外の舞台設定の錯綜を操るポランスキーの技は世界遺産級。だが中盤以降は展開に演出がやや従属か。不…

ラビット・ホール

★★★★★ 2011年11月12日(土) シネリーブル梅田2 失われた絆のドラマとして痛々しさが横溢し、実家や集会といった作劇上の付加要因も完璧に機能する。だが、真に斬新なのは加害者少年の在り方で、その錯綜する想いの絡まり合いが解れて提される微かな光明は…

ナイト&デイ

★★★★★ 2012年1月7日(土) トビタシネマ 60年代ハリウッド製ロマンス・アクションの最良形での復刻であり、フランケンハイマーを彷彿とさせるアクション演出の重量感も好ましい。そして、白馬の王子願望の成就が行き遅れ感あるキャメロンにより成される現…

ステキな金縛り

★★★★ 2012年1月14日(土) 大阪ステーションシティシネマ2 三谷の又かの50年代志向は相変わらずウンザリするし、外さぬ事を約束された配役も安寧に退屈だが、全く飽きもしないのは素直な中に若干の翳りを醸す深津絵里ちゃんが完璧に魅力的だから。そこだ…

ザ・ウォード 監禁病棟

★★★ 2012年1月21日(土) 新世界国際劇場 題材といい観客を置いてけぼりにする短兵急な展開といい80年代に量産されたイタリアンC級ホラーを髣髴とさせる。真摯に撮ってそうなるナイス爺さんカーペンターの真骨頂は夢幻に揺蕩うかの如きダンスシーン。ただ…

アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!

★★★ 2012年1月21日(土) 新世界国際劇場 掴みからして完璧にサイコーだし、主人公2人のキャラに絡んだボケ・ツッコミ設定は総じてギャグも高度である。特にエヴァ登場時のマークのリアクションは納得もの。ただ、どうにも肝心の事件絡みが弾けないのだな。…

果てなき路

★★★ 2012年4月7日(土) 第七藝術劇場 ノワールだと言うならフィルムの醸す鈍色のハッタリやケレンが全然足りず、撮影裏話と言うならトリュフォーやゴダールほどの確信的自己陶酔が不足。実俳優への言及や過去名画のインサートも閉じた世界を露呈させる。構…

レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳

★★★ 2012年5月12日(土) トビタシネマ 日本人の悪玉憎しのベクトルが今いち明晰ではなく無駄に寄り道するので盛り上がらないこと甚だしい。ドニーは変装ネタにせよ白の武道衣にせよリスペクトバリバリだが、ラストの死闘を含めしなくていい比較感がよぎる。…

バイオハザードⅣ アフターライフ

★★★ 2012年7月28日(土) トビタシネマ 冒頭、渋谷のザック・スナイダー的ケレンに期待値は上昇したが、ダークスーツ黒眼鏡野郎と分身の術で一気に氷点下に下落。あとはマジ凡庸な出来。多くのアンデッド化した魂は無視され高位の抗組織戦に収斂するなら急転…

密告・者

★★★★ 2012年8月11日(土) トビタシネマ イヌの妹への又ボスの情婦への想いと、刑事のイヌへの思いと元妻への想い。暴力まみれの殺伐な泥沼の中で4つの想いの真摯で衒いがないことに打たれる。中でもイヌと情婦の成り行きに導かれた道行は行きつくとこまで…

トロール・ハンター

★★★ 2012年12月11日(火) 新世界国際劇場 最早、食傷気味なフェイク・ドキュではあるが、北欧の底冷えするかの如き山間部の景観のリアリズムが皮膚感覚的に秀逸。トロールは初出の末路こそ新味であったが、慣れると伝承と新解釈の間の針の置き方が半端だ。…

恋のロンドン狂騒曲

★★★★ 2012年12月27日(木) 大阪ステーションシティシネマ3 愁嘆場を見せぬにしても、もうちょい粋な〆方があるだろとも思うが、相変わらずの軽妙闊達な『人生万歳!』的群像捌き…が『夢と犯罪』系の悪意の破綻の釣瓶打ちに集約されるあたり総決算の趣き。…