男の痰壺

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美しき仕事

★★★★ 2024年7月27日(土) シネヌーヴォ

サイト&サウンドで映画史上7位に選ばれたことがある傑作と聞いてもクレール・ドゥニの映画という点で食指が動かなかった。そらくらい「ハイ・ライズ」のフェミニズムが澱んだ残滓に食当たりした俺なのであった。

 

だが、アフリカに駐屯する外人部隊の日常を淡々と描いた本作にフェミニズムのフェの字も入り込む余地はなく、かといって女性視線で男達の集団を描くことによるマチズモへの批評、或いはヤオイ趣味への傾倒など、懸念された要素はなかった。

見事にプレーンである。あるのは熱暑の砂漠といった風土と戦闘の合間の軍隊の訓練でも埋め切れない悠久の時間。ドゥニはその風土と時間を見事にフィルムに定着させている。

 

北アフリカのジプチという国が舞台なのだが、アルジェを舞台にしたカミュ「異邦人」に通底したものを感じた。それは先述した風土・時間によるものと思われる。まあ、とは言ってもこのドニ・ラヴァン曹長のやることは解りやすくて実存主義とは遠いんですけど。

 

「鬼火」のように閉じるのかと思ったら最後は「冷たい血」みたいなラヴァンのタコ踊り。激しく興醒めだった。まあ、それやらにゃ気が済まんのでしょうな。

 

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