男の痰壺

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アダプション ある母と娘の記録

★★★★ 2023年6月5日(月) シネリーブル梅田3

アニエス・ヴァルダやケリー・ライカートら女性監督からリスペクトされてるらしいハンガリーのメーサーロシュ・マールタの1975年作でベルリンで金熊賞を取っているものだそうだ。

 

描きたいことが明確にあって、常道の物語叙法は採らないので、何でや?と思わせる展開がままある。

若い女が見ず知らずの42歳の女性をいきなり訪ねて彼氏とデートするのに部屋貸してくれと頼む。

・不倫してる相手に子どもを産みたいと詰め寄ると専業主婦の女房がいる家に招かれる。

などなど。

 

中年女も若い女も生きとし生けることに真摯であるし、自らを憐憫したり世を儚んだり卑屈になったりしないし、かと言って無理して突っ張ってみせたり虚勢を張ったりもしない。単に一生懸命生きているだけ。

 

わかる?それが私たち女の考えてることよ。バカな男たちには解らないでしょうけど。ってなことでメーサーロシュ・マールタは女たちからリスペクトされるのであった。不倫相手は意味不明に奥さんと私を会わせるし、若い彼女の彼氏は結婚式でさっそく別の女に色目使ってる。ほーんと男ってロクなもんじゃないわ。

 

ラスト、吹っ切れるたようにバスを追いかける彼女のストップモーションで締めくくられるという余りな70年代テイストに、映画館の片隅で縮こまっていたダメな男の1人である俺はため息混じりに呟いた。

ハードボイルドやなー。

 

我も欲もなく虚勢も張らず、かと言って卑屈さや自己憐憫とも無縁な女たちの生き様。これが女の生きる道、男どもはロクでもない奴ばっか、そんなん放っとけとのハードボイルドな覚悟。70年代ハンガリーのニューシネマ。それが女によって為されたことが稀有。(cinemascape)

 

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