男の痰壺

映画の感想中心です

ときめきに死す

★★★ 2023年9月15日(金) シネヌーヴォ

見逃していてずーっと見たかった作品だが、やはり40年も経ってしまうと鮮度落ちは拭いがたかった。

 

【以下ネタバレです】

暗殺者の話で、決行までの時間を描いている。殊更に準備するでもなく、ダラダラとした時間が流れる。これをダラダラしたもんと割り切ってしまえば、それはそれで何らかの味わいも又でてくるかもと思うのだが、「家族ゲーム」の成功の余韻冷めやらぬ森田は再び色々ギミックを塗す。結果、ピンボールマシンやパソコン少年の見るデータ画面などが表層を上滑りする。これらによって沢田扮する暗殺者の得体の知れない無機性を映画内世界に着床させたいと思ったかは知らないが、相入れぬままでハッタリの底浅を露呈させるだけであった。

 

だが、一方で杉浦直樹扮する協力者は泥臭い内実を撒き散らす。身の上話をし、暴力を振るい、女を買う。この70年代的な価値観が沢田の纏う森田流80年代と相剋するところを見たかった。しかし、こちらも最後まで両者は分離したままなのだ。、

 

両者の橋渡し役を担う女が途中から登場するが、沢田の概念性を突き破ることは出来なかった。でも今回、樋口可南子のエロさが初めて。わかった気がする。若いときに見てたらわからなかっただろう。役は大したことありませんでしたけど。

 

決行までの無為の時間を無為だと開き直ることで見えてくる地平がある筈だが、森田の施す多様なギミックが上滑りして底浅のハッタリを露呈させる。沢田の80年代の無機性に対する杉浦の70年代的泥臭さ。その相剋に期待したが噛み合わないまま。(cinemascape)

 

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