男の痰壺

映画の感想中心です

ストップ・メイキング・センス

★★★★★ 2024年2月5日(月) 大阪ステーションシティシネマ

正直、トーキング・ヘッズにほとんど関心もなかったし、故に楽曲も全く知りません。にもかかわらず、この映画には興奮した。噂に違わぬ傑作だと思います。

 

博士の異常な愛情」が印象深いパブロ・フェロのデザインタイトルが床のような背景にかぶさる。そこを歩いてきたデヴィッド・バーンの脚を追ってカメラもステージへ。もう一気に掴まれる導入。

ライブの構成がまた実に映画的である。ラジカセ片手にリズムセクションを流してバーンはギター1本でソロ歌唱。2曲目でベース、3曲目でドラムが加わる。曲間ではスタッフが黒子よろしく静々とセッティングするのも痺れます。後半ではサポートメンバーも加わり盛り上がりは汗まみれの佳境に達する。

 

撮影のジョーダン・クローネンウェスも「ブレードランナー」に続く仕事で油が乗り切る。6台のカメラは全部固定でクレーン使用はなし。決めたアングルのショットで充分との矜持。それで丸っぽ曲と演奏を魅せ切る。他は一切ありません。簡潔で奥深い。

 

ジョナサン・デミの映画って「羊たちの沈黙」と「フィラデルフィア」しか見てないんですが、ヘタな撮影・編集ギミックを排して素材の最力点だけをシンプルに抽出することに長けていたと思う。本作もそういうプレーンな強度に充ちています。

 

1人又1人のライブ構成が始まりを示現しやがて佳境に至る様が伝説を語る映画のよう。黒子めくスタッフの動き。バーンの練ったアイデアとクローネンウェスの冷徹な素材提供とパフォーマンスを魅せ切るに徹したデミのプレーンな編集の幸福な合致。(cinemascape)

 

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