男の痰壺

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ファミリア

★★★★ 2023年1月10日(月) 大阪ステーションシティシネマ12

現在、乃至は今後の日本にとって将来の国力を決しかねない最重要課題が少子化問題と並んで移民問題であることが最近にわかに改めて言われだしている。

難民申請の制度的な遅れを指摘した「マイスモールランド」や労働実習生の問題に切り込んだ「海辺の彼女たち」のようなナウな視座の映画も近年あったが、本作は移民たちとの日本人としての関わり方を問いかける。それはソリッドではない旧態な視座に見えて今改めて考えないといけない問題だと思います。

 

成島出の映画を久々に見た気がするが、「八日目の蝉」のころの骨太な筆法を回復していると思いました。開巻まもないブラジル人移民の居住区である巨大団地の朝、ドローン撮影による俯瞰図からの長回しが素晴らしい。ライブハウスでのブラジル人と半グレたちとの小競り合いから逃げ出した男が徒川して逃亡する大俯瞰を含め撮影のロングと寄りの緩急が快感だ。

 

この映画、焼き物職人の親爺と息子の小市民的なドラマから始まりブラジル移民と半グレの諍いへと間口を広げるのだが、それが更にアルジェリアを舞台としたテロ事件へと拡散していく。いくらなんでもおっ広げすぎやろと思うが、手を抜かない演出は馬脚を現すのを寸前で回避させていると思いました。

そんだけ広げた話をどう収拾するんやと思いながら見てましたが、やっぱ終盤は多分にやっつけ感が拭えない。惜しいと思った。

 

多くの演技未経験のブラジル人を起用して、ようこんだけ演技させたなと思います。絶体絶命の状況で男と女が時間を惜しむかのように互いを求め合う。「仁義なき戦い」での文太「時間がないんやー」の名台詞を思い出してしまった。サガエルカスとワケドファジレの団地屋上でのシーンは名シーンだと思う。

 

小市民の親子話からどこまでおっ広げるんやの拡散だが成島のゴジ系譜の演出が図太くもケレン満載で魅せ切ってしまう。創造されたブラジル人居住区の造形の映画的ダイナミズムと屋上での一夜の昭和懐旧的な刹那感。やっつけ感ある展開の収拾が惜しい。(cinemascape)

 

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