男の痰壺

映画の感想中心です

ミニー&モスコウィッツ

★★★★★ 2024年2月12日(月) プラネットプラスワン

【ネタバレです】

前代未聞の卓袱台返しが呈される。最初は唖然として、次にざけんなと腹が立ち、でも何日かしてカサヴェテスの全てを肯定する包容力に平伏す思いに至った。

 

例によってしんどい状況が繰り広げられるが、特に今回、モノマニアック野郎大競演の趣きである。シーモア扮するモスコウィッツがレストランで粘着男に絡まれている。最初はおとなしく聞いていたが終いにキレて席を立つ。で、彼は別のバーに行きあっちこっちで絡んで叩き出される。なんのことはない、モスコウィッツも偏執野郎なのであった。

場所が変わってジーナ扮するミニーが職場の同僚から紹介された男とイヤイヤデートするのだが、レストランに入っても注文せずにひたすらに男は喋る、口説く、嫌気がさして席を立とうとするとキレられる。置き去りにされたミニーは救いの手を差し伸べたモスコウィッツとやむなく同道。しかし彼もまた…。

とまあ、連鎖する偏執人間の尻取りの果てに映画の中心軸に収まったミニー&モスコウィッツなのだが、片や国立美術館の職員、片やしがない駐車場係、片やジーナ・ローランズ、片やシーモア・カッセル、片や普通女、片や偏執男とまあ出所来歴も違うし住む世界も違う。途中でミニーが言う。「私たちうまくいきっこない」もー誰が見てもごもっとも、仰る通りなのであります。

 

だけど男と女はわかりませんなー。映画もわかるような心理描写は一切しない。特にミニーの心の揺らぎは謎である。であるが、こんなこともあるよな、うんあるあると力技でもっていかれるカサヴェテスの確信と画面の強度が凄まじい。そこにはシニカルさは微塵もないんです。

 

偏執野郎大競演の趣きの序盤から振るい落とされ世界の片隅に佇む2人。住む世界も性格も見てくれも天と地ほど違うし「上手くいきっこない」との彼女の言葉もご尤だが、カサヴェテスは強引な卓袱台返しの力技で収束させる。これが男の優しさっちゅうもん。

 

偏執野郎大競演の趣きの序盤から振るい落とされ世界の片隅に佇む2人。住む世界も性格も見てくれも天と地ほど違うし「上手くいきっこない」との彼女の言葉もご尤だが、カサヴェテスは強引な卓袱台返しの力技で収束させる。これが男の優しさっちゅうもん。(cinemascape)

 

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