男の痰壺

映画の感想中心です

キングダム

★★★★ 2019年5月24日(金) 大阪ステーションシティシネマ
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原作未読です。
正直、見る気はぜんぜんなかった。
だって、漫画ならともかく、日本人が日本語で演じる中国史にのっとった話なんて胡散臭い。
たとえば、日本の戦国時代を中国人が中国語で演じて映画化されたらどうか…なんて思うんです。
日本人の多くは、ギャグかと思うだろうし、ヘタすりゃ国辱とか言い出す野郎もいそう。
しかも、若手のイケメン俳優が演劇的素養もなく演じるそれは学芸会の懸念もある。
 
であるが、最初の30分はともかく、それ以降は違和感は払拭されて俺は映画に没入した。
それは、大ヒットした原作漫画の持つモチベーションの賜物であるし、それを、実に巧緻に換骨奪胎した脚色の賜物だと思う。
 
スター・ウォーズ」の名前を挙げる評を見たが、俺もそれを感じたし、もっと言えば、その源流となった「隠し砦の三悪人」みたいな話だ。
つまり、内部闘争で放逐された「王」を抵抗軍の平民や武将が護り、守り立てて悪の帝国に抗戦をしかけるという話であって、それは万人が血湧き肉踊る由緒正しい物語。
しかも、ここでの王様はレイア姫や雪姫と違って、折に触れて試されるし、それに打ち勝っていかねばならない。
そういう意味で、万事休すの局面でゲリラ民族の山の民を仲間に引き入れるアジテーションは及第点だった。
加えて、平民奴隷の山崎賢人のべらんめえな口語体アジが加わって済し崩す。
この映画、総じて、あまりに演劇調では、素養のない役者でこっぱずかしいところ、そういうナチュラルな現代語を上手くミックスして切り抜けていると思われる。
 
終盤の決戦だが、おうおうにして、日本映画はそこで崩れることが多い。
乱戦というのを描ききるタフネスが日本人には欠けているのが理由だと思うのだが、そこも惜しげないキャラ投入をすることで切り抜けている。
終盤の功労賞は坂口拓であった。
 
ヒットもむべなるかなの良作であり、続編があるなら見たいと思わせる出来であった。
これだったら、中国人に見せても許してくれるんやないやろか。
ダメっすか。
 
若き君主を立て覇権を奪回する旅路に参画する奴隷・蛮族・軍人の各々の思惑が統合される過程に必要な大風呂敷の納得性が映画枠の無理筋を押し切る。アクションの切れ、劇画的詠嘆ともに過不足なく、快演まさみと怪演大沢筆頭に良い面構えが揃ってる。(cinemascape)