男の痰壺

映画の感想中心です

スケート・キッチン

★★★★★ 2019年5月13日(月) 大阪ステーションシティシネマ
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女子のスポーツものといえば、昨年、「バトル・オブ・セクシーズ」や「アイ・トーニャ」といった実在のスポーツ選手を描いた作品があって、どちらも力作であったが、これは、そういった流れに与しない。
バリバリのインディーズ映画でジェイデン・スミス以外はほぼ無名の出演者ばかりだ。
 
主役の子は、一応モデルらしいが、ひとこと地味。
実際のガールズ・スケボー・グループの面子が出演者で彼女もその一員。
であるから、役者が即席で特訓したのと違って何気ない所作や醸す雰囲気が板についてるのだ。
とりたてて、何かスケボー技をフィーチャーするわけでもないし、対戦的なドラマもない。
あるのは、居場所がない少女の居場所探しであり、その見つけた居場所での軋轢みたいなもの。
仲間の彼氏とできちゃっって(っていうか未遂なのだが)、居場所を失うみたいな話で新味ゼロです。
 
妙味は、先述した本物が醸すドキュメンタリーのようなリアリティです。
監督も女性だから、そのガールズトークの生々しさや女性特有の腹に一物あってもそぶりに出さない表層が男からすれば、理解できない世界観である。
描かれてるのは、他愛ない女の子の世界なのだが、驚くくらいに視点はクールなのだ。
 
ドリュー・バリモアが撮った「ローラーガールズ・ダイアリー」も傑作であったが、それでも既存の商業映画に準じた部分は否めない。
これは、それから10年を経て、まったく新しい地平にたった映画だと思う。
 
仲間から放逐されてもSNSで「ごめんね」と言えば大丈夫なガールズコミューンだとしても、打ち込む共通土俵があればこそなのだ。そこは肌の色やセクシャリティは全く問題にされない世界。彼女たちの所作や醸す雰囲気のリアリティが映画の信用性を担保する。(cinemascape)