男の痰壺

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ザ・フォーリナー 復讐者

★★★ 2019年5月5日(日) MOVIXあまがさき1
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ジャッキーの新機軸みたいな言い方をどっかで見たが、それほど何がしかが変わったようにも見えない。
「老化」であるが、そもそも「ベスト・キッド」がエポックで、ジャッキーが脇に回ったってのが革命的であったわけで、カンフーでも完全封印でもすれば未だしものレベル。
「笑わない」であるが、笑わないジャッキーって初めてかっていう話であって、「新宿インシデント」あたりの笑わぬ心情の方がはるかに切実だったように思う。
 
これは、IRAの現況を描いたものとしてのみ価値がある映画だ。
嘗ての武闘派から融和派に転じた男を久々のピアーズ・ブロスナンが演じて意外なほど滋味深い。
彼が嘗ての同僚の膝を打ち抜いて内通者を尋問する。
テロを仕掛ける武闘派のアジトを急襲した英特殊部隊が有無を言わさず拷問して計画を聞き出す。
内通者の女を気を通じた若者が逡巡なく射殺する。
 
こういった意外なまでに怜悧なプロットとジャッキーは隔絶される。
彼は飽くまで1対1で戦い、相手とは和解する。
こういう程度でジャッキーの新機軸ってのは、どうもねえ。
やっぱ、その壁の大きさに今更ながらに気づかされたんだわ。
 
歳相応なジャッキーを買いだと言えど蛙の子は蛙なのであってブロスナンのエロ爺い的腹芸に及ばない。融和と抗戦が内部軋轢を産む今のIRAを描いて呵責ない殺戮が交錯するドラマと娘の復讐譚は交わることはないのだ。突き抜けず場違い感が横溢する。(cinemascape)