男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【あさ~あの】

アデル ファラオと復活の秘薬

★★★ 2010年7月9日(金) 梅田ブルク7シアター6 冒頭の叙述的語り口から19世紀ロマン主義的展開を見せ始めるあたりが悪くもなく、米映画の低位な取り込みも目を瞑る。ギャグかと思えるオチが結構マジそうなのもベッソンの天然たる所以で今更何も言うまい…

あしたのジョー

★★★ 2011年3月6日(日) MOVIXあまがさき8 原作がそうなのだから言っても詮無いが、ファイト場面がノーガードのクロス狙い一辺倒で芸無く、決めもCG塗れのケレンを強要され不快。だが、それ以外の世界のトレースは巧緻で、キャストも香川を筆頭に敢…

アジアの純真

★★★★ 2011年12月10日(土) 第七藝術劇場 全肯定には躊躇するが、少なくともマスで醸成された言説を全否定し、且つ強固な自己反省を携えつつ世界に牙を向くという正しい在り様には賛同。大島・若松的な気骨はキューブリックなアイロニーに至る。全般粗いがロ…

アジョシ

★★★ 2011年12月10日(土) 新世界国際劇場 主人公と少女の関係が表面上ベタついていないのが救いなのだが、結局、心根ではメロウな野郎であることが嘘臭い。ゲスな兄弟とその配下の超プロなタイ人傭兵という敵キャラ配置も最早見飽きた感がある。警察の介入…

朝が来る

★★★★★ 2020年11月6日(金) TOHOシネマズ梅田10 今まで河瀬直美のことを、どうしても斜め上からしか見れない感じがしていて、それは、女性というアイデンティティをあまりに前面に出してそこに依拠した作風であることから、やたらな海外での高評価も、…

アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!

★★★ 2012年1月21日(土) 新世界国際劇場 掴みからして完璧にサイコーだし、主人公2人のキャラに絡んだボケ・ツッコミ設定は総じてギャグも高度である。特にエヴァ登場時のマークのリアクションは納得もの。ただ、どうにも肝心の事件絡みが弾けないのだな。…

アタック・ザ・ブロック

★★★ 2012年6月23日(土) シネリーブル梅田2 少年達が主役なので、所詮はコード内に留まらざるを得ない生ぬるさで、かと言って友情や成長といった真摯なジャンルテーマにも感度低い。外景や遠景を駆使せぬ演出は高層住宅という魅力的空間を活かし切ったとも…

アナザー・ハッピー・デイ ふぞろいな家族たち

★★★★★ 2012年12月27日(木) シネリーブル梅田1 心を病むことは特別なことでもない。地続きの日常の中で他者と混じわい軋轢があってこそ少しづつでも前に行ける。宴と前後する数日の人の出入り捌きの錯綜のダイナミズムはアルトマン級で、痛さを直視する怜…

アナザー・カントリー

★★★ 2013年1月17日(木) テアトル梅田1 おっさんがもったいぶって語らう回顧譚に驚くほど何も無い事が衝撃でさえある。ゲイ天国と化したらしき全寮制ハイスクールのパワーゲームは本質を描かぬことでスカスカだ。「惑星」のボーイソプラノとアイビーに惑う…

アッシイたちの街

★★ 1981年3月11日(水) SABホール 中小企業を題材に虚々実々の親会社との攻防を描くのであれば、脇を固める山本ファミリーが俄然水を得たであろうに、工員バンド「アッシイ」が高らかに労働讃歌を歌うアナクロぶりが観客の心を絶対零度に凍てつかせてし…

アニマル・キングダム

★★★ 2013年5月13日(月) 新世界国際劇場 過剰なものに慣れすぎたからだろうか。極悪ファミーリアから連想される激刺激は皆無である。心理的葛藤劇としてのサスペンス醸成にも無頓着であり、肩寄せできるキャラが無く淡々と流れていく時間。それが味と言えば…

アシャンティ

★★ 1981年3月21日(土) トビタシネマ 顔見せ程度にちょっと出ては消えていくロートルスター達が緩すぎる。ユスティノフは全然怖くないしホールデンは柄じゃない。一方で砂漠で光るアラブの男ベディは嘗てのシャリフをも髣髴とさせ光る。冷えた好食材は親爺…

ANO ANO 女子大生の基礎知識

★★★ 1981年5月4日(火) ダイニチ伊丹 女子大生への社会学的考察は無くとどのつまりどうでもいい話だってのは皆十分に判った上で、それでも精一杯努力し貨幣対価に相当するものを創ろうとすることは素晴らしいことだ。ロリータな森村陽子はロマンポルノ史上…

アタラント号

★★★★ 1981年5月21日(木) 関西学院大学学生会館大ホール 1992年5月10日(日) ルネサンスホール 上流から下流へ田舎から都会へと小さな船で下って行くってのがミソで、流れる景観は開放と希望を表象する。船内密閉空間でも気の置けぬ爺さんとガキに囲まれ若夫…

明日に向って撃て!

★★★★ 1975年6月1日(日) 阪急プラザ劇場 1976年4月18日(日) 伊丹グリーン劇場 どうやっても躱し切れない追手の松明の灯りにアウトローであることの虚飾ない居た堪れ無さが心に沁みる。無口な人嫌いが絞り出す「泳げない」の一言と眼差しの哀しみ。この中…

アップグレード

★★★ 2019年10月30日(水) 大阪ステーションシティシネマ7 そんなに期待してたわけでもない。 で、期待通りに普通だった。 AIが飛躍的に発達し何かと人口に膾炙する今だからこそ、この程度の旧態な機械に人間が支配されるみたいな話では普通すぎるんやな…

アナザ・サイド

★★★★ 1981年6月14日(日) 夕鶴小ホール 1982年11月2日(火) 関西学院大学1号別館1号教室 当時の自主映画界の少女趣味とパロディとエログロの三角形の内部で形成された真摯過ぎるまでの内省的な本物志向に心撃たれた。学生服で宵闇の街角をそぞろ歩く葬式帰り…

アド・アストラ

★★★★★ 2019年10月21日(月) 大阪ステーションシティシネマ7 これは一目瞭然なのだが、「地獄の黙示録」かその元ネタの「闇の奥」の劣化版のSFへの置換だと思う。 何故に劣化版かっていうと、まあ大山鳴動して鼠一匹どころかなーんにも出てきませんでしたっ…

あなたの名前を呼べたなら

★★★★ 2019年6月17日(土) テアトル梅田2 恋は障壁があるほど燃え上がる。 なんちゃって、柄でもないこと言ってますが、実際、夫婦であっても、隙間風が吹き出したとき、なにか共通の障壁が出てきて、やむをえず一緒に乗り越えていかないとしゃあなくなる。…

新しき世界

★★★★★ 2014年2月22日(土) シネリーブル梅田1 既視感のある設定とも言えるのだが、豊穣で魅力ある細部の連鎖と組み合わせの妙が否応なくアドレナリンをかきたてる。一筋縄でいかぬキャラもてんこ盛りだが特筆のジョンミンの大友イズムと大陸の物乞い。そし…

アデル、ブルーは熱い色

★★★★★ 2014年4月12日(土) 梅田ブルク7シアター3 出会いと別れに纏わるザ・シンプルな内容で、物語的なギミックは皆無。同性愛をめぐる周囲との軋轢が後半放逐されるあたり寧ろ興味がないのだろう。ひたすら2人の射抜き射抜かれる視線の交錯と最深部まで…

新・明日に向って撃て!

★★ 1980年1月15日(火) ビック映劇 ブッチがナイスガイだってのを前作ではニューマンが説明なくとも十二分に体現できていたのに対し、本作では前面に出しすぎて何か嫌らしい。非情さが無く温いし、リリシズムは安い。そっくりショーとしてはベレンジャーは表…

朝やけの詩

★★★ 1980年6月11日(水) 毎日ホール 大自然の無邪気賛歌風な小っ恥ずかしさを割り引いても半ドキュメンタルに開拓村の日常を描写した前半に限れば全く素晴らしい。しかし、仲代・佐分利が薩夫チック演技をし始め欣也の東映調が噛み合わない後半で一気に空中分…

あなただけ今晩は

★★★ 1980年8月8日(金) 毎日文化ホール ペーソスの塊だったトリオ前作に比べ、すり替わりのドタバタを前面に出したのは良いが、そこに徹しきれずに半端にペーソスを投入する。結果半端に笑えて半端に泣けるものにしかならなかった。ギャグが超現実に飛翔する…

アトラクション 制圧

★★★ 2018年1月20日(土) 新世界国際劇場 エンドクレジットを見るとCG関係のスタッフロールがめっちゃ多い。 確かにハリウッド映画並にクオリティは高いと思う。 演出もかなりに骨太。 監督はセルゲイ・ボンタルチュクの息子らしいですなあ…力あると思いま…

TOMORROW 明日

★★★★ 2015年8月23日(日) シネヌーヴォ 定められた結末へ向かい刻まれる時間を煽情的にフィーチャーすることない黒木の良識を良しとしつつ、だが尚コンセプトは明け透けだ。しかし、それでも気持ちが締め付けられるのは進行するドラマの慎まし過ぎる希望。…

アニー・ホール

★★★★ 1979年10月14日(日) 大毎地下劇場 多くのトリッキーな手法が試されてるが、先行者の素描か或いはお試し感拭えず数打ちゃ当たる的場当たりに留まるのだが、コンプレックスを武装し捲くし立てる台詞が同期することで追憶の中で愛惜へと置換される。キート…

アトミック・ブロンド

★★★★ 2017年10月24日(火) TOHOシネマズ梅田8 シャーリーズ・セロンはよくやっていると思う。 少なくとも「マッド・マックス」よりはるかに良い。 だが、こういう体技のキレが要されるアクションでは、やっぱり天賦の才がものを言う。 ミシェール・ヨーや…

あにいもうと

★★★★ 1977年4月6日(水) 伊丹ローズ劇場 昭和初期の設定を70年代に強引に移植したら兄妹の確執は一層の生々しさを獲得した。草刈が秋吉に牛乳を吹きかけるシテュエーションが白眉。ラストの秋吉久美子は正に独壇場で女優賞も無碍なるかなである。 (cinemasc…

アデルの恋の物語

★★★★ 1977年9月23日(金) 大毎地下劇場 叙情的で随筆的なトリュフォーの特質は強固な物語に引きずり回され神がかり的なアジャーニに身を委ね影を潜めるが、それは、映画史に於ける一つの神話の創造への敬意を思わせる。文豪の娘という設定に従ずる手紙という…