男の痰壺

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人生は四十二から

★★★★★ 2024年4月29日(月) プラネットプラスワン

イギリスの階級社会で親子代々執事稼業についてきた男がひょんなことからアメリカのど田舎成金に身を売られて渡米する。そこは全く違う世界であった。

とまあ、ありがち設定のアメリカってのはドリームカントリーだぜ、ヘイヘイ!なのだが、このド田舎成金&その女房&そのおっ母さんのキャラが実に明け透けに素晴らしいのが突き抜けてると思わせる。各々、チャーリー・ラグルズ、メアリー・ポーランド、モード・エバーンと聞いたことも見たこともない役者なんですがええなーです。

 

身に染みた階級差根性はちょっとやそっとでは解きほぐすことはできないが、そんなバカなことやめちまえの世界が後押ししてくれる。

イギリスから迎えに来た元の主人も世界に染められて変わってしまう。こっちで頑張ってみたいという元執事に大丈夫か?お前と心配してくれる次第です。ええ人で良かったネです。

 

そういう平等な世界を担保するのに酒場でリンカーンゲティスバーグ演説が引用されるのだが、ど田舎ゆえに誰も知らない。おいおい誰もどんなだか知らないのかよと諦めの最中に片隅からそれを諳んじる声が。おそらく全文を朗じる執事=チャールズ・ロートンの見せ場だろう。その年のNY批評家協会賞の男優賞を受賞しております。

 

鉄板の階級社会で骨身に染みた隷属根性を解きほぐすにはという命題に対して、そんな七面倒くさいこと止めちまえーの単細胞的アメリカンな物腰ハレルヤ。リンカーンゲティスバーグ演説の降って湧いたかの如き朗唱を内実の変化に仮託するロートンの秘技。(cinemascape)

 

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