男の痰壺

映画の感想中心です

サバイバルファミリー

★★★★★ 2017年3月11日(土) TOHOシネマズ梅田10
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一行が這う這うの体でたどり着いた大地康雄の農家で数十日ぶりに食べる炊き立てご飯の食事。
目玉焼きと漬物と味噌汁。
このシーンに観客の気持ちを同化させ得るかがポイントだったが…はい、同化しました私。
涙が出そうになりました。
映画は、そこに至るまででに十全に4人をいたぶり続けるのだが、特に希望の地、大阪での炊き出しをめぐる挿話が決定的に機能しているのだろう。
臨界スレスレな状況に陥っていることを納得させていた。
 
矢口監督の初期作「裸足のピクニック」はスパイラル的に状況がドツボにはまっていくロードムービーだった。
俺は感銘を受けたが、その後「ウォーターボーイズ」を見に行きいたく失望した覚えがある。
伊丹十三周防正行系譜のリサーチ主義的作風に迎合したかのように感じたからだ。
 
今回、初心に帰ったわけでもなかろうが、少しく処女作のテイストがする。
 
終盤、性急すぎて凡化したが、それでも多くの細部がそれを補っている。
三郎&紀香&息子たちのイケメン・アウトドアファミリー。
良いやつらなのが、逆にいけ好かなさを煽る。
俺はそのとき完全に小日向に同化していたね。
 
スパイラル的に状況悪化するロードムービーとして矢口初期の『裸足のピクニック』を想起する原点回帰作。大阪から岡山に至る佳境は作劇のサディズムが炸裂する。終盤は性急すぎ凡化したが多くの魅力的細部がそれを補った。慇懃三郎&紀香が絶妙。(cinemascape)