男の痰壺

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霧の旗

★★★★ 2017年10月21日(土) シネヌーヴォ
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女の執念を、これでもかとネバっこく描いた点で、増村の「妻は告白する」と双璧かもしれない。
倍賞千恵子の心根を見せないが底にナイフを忍ばせたかのような冷たい表情は絶品。
 
だが、俺はそこより演出面での山田洋次の才覚にちょっと驚いた。
 
清張原作で橋本忍脚色の映画が何本あるか知らないが、これは真正面から挑んで御していると思う。
野村芳太郎ほどのケレンはさすがに無いが、世評の高い堀川弘通の「黒い画集」には十分拮抗する出来だ。
 
もうちょっと、この路線で撮ったらよかったのにと思ってしまった。
 
非道とも言えぬ滝沢への彼女の仕打ちに妥当を付与する論旨の捻じ曲げは当然無い。代わりにプロ意識に根差した男の推理が牽引する論理的中盤。そして偶発の事件を契機に叙述から舞台劇調に一転する語り口。2人きりの世界で怨念は一気に物語に包括される。(cinemascape)