男の痰壺

映画の感想中心です

赤穂浪士

★★★★ 12月12日(月) 新世界東映

毎年、暮れともなれば映画もテレビも「忠臣蔵」って時代があって、多分60年代がピークだったんじゃなかろうか。ひねくれた俺は、そんな年中行事みたいな手垢まみれの趣向にソッポを向いてきたので、まともに忠臣蔵見たこともなく、見たのは深作「赤穂城断絶」や市川崑四十七人の刺客」くらいでしょうか。

 

正道を旨とする好青年の浅野内匠頭をいけずな吉良上野介がいびり倒して刃傷松の廊下、哀れ切腹と相なった主君の仇を大石内蔵助他47人の忠臣たちが討つ。

というのが忠臣蔵のメインスキームであるが、本作で印象に残るのはメインの大石内蔵助ではなく、浅野の隣国領主、脇坂淡路守(中村錦之助)であり、浅野の用人、片岡源五右衛門山形勲)であり、大石とはかみさん同士も仲がいいライバル、千坂兵部(市川右太衛門)だったりします。

おっさん同士が万感こめて対峙して視線を交わす。これを松田定次の演出はこれでもかとばかりにたっぷり尺の切り返しを重ねる。いよー待ってましたの大見得です。

 

赤穂浪士の面々ではなく本作では刃傷松の廊下に至るまでが良い。錦之助の脇坂淡路守が絶品で浅野を慰労する酒宴は涙なしには見れない。越え難い立場の枷とそれでも滲み出る男気が随所でスパークする視線の交錯。千恵蔵は花咲爺と太鼓叩きだけ見せ場。(cinemascape)

 

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