男の痰壺

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第十一号監房の暴動

★★★★ 2023年7月17日(月) プラネットプラスワン

ドン・シーゲルの初期作品だが、当然の如くに低予算なのでセットなんか組めずに実際の刑務所でロケしている。囚人たちもエキストラで出ているようだ(タイトルロールで刑務所と囚人への謝意が出ます。)

そのことがドキュメンタルなリアルさを映画に付与している。多分、セットとか組んで撮ったら安っぽく間伸びしてこのヒリヒリ感は出なかっただろう。大体に於いて内容に劇的なもんは大してないのである。

 

冒頭であっちこっちの刑務所で暴動が頻発していると出る。そんなわけで、ここ第十一号監房でも俺らもいっちょやるべーみたいな雰囲気が。でもよー何要求するかなー意見言ってみなとネヴィル・ブランドは紙と鉛筆もって意見を取りまとめる。意外にまじめです。

そんで看守らを縛り上げて立てこもる。要求を突きつけ知事と新聞社呼んでこいと。

まあ、その後、小さな事件や小競り合いがあるのだけど、要求が聞き入れられ看守たちは解放、その後やっぱ要求聞けません、首謀者は厳罰、となんとも煮え切らない展開です。

 

本作が監督10作目になるシーゲルの演出は既にしてタイトなのだが、特にロケーション撮影の組み込みが巧いと思いました。この2年後の「ボディスナッチャー」なんかでそれは顕著になるし「ダーティハリー」に至って全面開花の趣きがある。

画面の奥から人が走って来て手前に至る。そこは1カットで見せ切らないといけない。「ハリー」の公衆電話どうどう巡りのシークェンスを形成した臨場感への拘りはこの頃から芽吹いていたように思える。

 

低予算を逆手に取ったドキュメンタルな臨場感への拘りと、1つのアクションが奥行きを伴った活劇性を既にして獲得していることがシーゲルらしい。暴動の切迫感の無さや顛末の萎えきれなさは如何ともし難いのだがサイコなサブキャラも後の系譜に繋がる。(cinemascape)

 

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