★★★ 2024年3月24日(日) Tジョイ梅田5
犬のブリーダーの父親に虐待されて何年間も犬たちの檻に閉じ込められて過ごした少年の実話にインスパイアされた作品だそうだ。
であるから、実話である少年期の話はまあ幾許かの手応えはある。だが、救い出された彼が成人してからの話はベッソンの創作なんだろうし、その創作部分がスカスカです。何の刺激もない。
ただ、この主人公の下半身不随(それも父親の射った銃の跳弾が脊髄に当たってそうなった)で身寄りがなく、ドラッグクイーン稼業で凌いで犬たちと暮らす、というキャラ設定と演じたケイレブ・ランドリー・ジョーンズの獣臭を香水で消し爛れをドーランで隠したかのような見事な造形力だけは特筆に値する。もう、見どころはそれしかないんだけど、それ見たらええわと思わせるだけのもんあります。彼のフィルモグラフィ見ると結構見た作品が多いのだ全く印象にありません。そんな彼を抜擢したセンスだけはベッソン買えると思います。
「ジョーカー」が引き合いに出される社会的弱者の主人公だが、越境してピカレスクに振れるのでなく、自らを閉じていってしまう。そのへん勘弁してほしいまでのセンチメンタル臭でベッソンの好かない部分がモロ出た感じです。