男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【おあ~おの】

黄金の七人

★★★★ 1994年9月25日(日) 扇町ミュージアムスクエア 安全な高所から美女を侍らせ高見の見物で指令を送る教授。人生こうあらねばと少年時代に思ったか思わなかったか知らんが、そうなってないのは事実。メカニカルな装置美術とポップな色調の撮影と過剰な音楽…

大阪物語

★★★★★ 2002年7月8日(月) トビタ東映 滅び行く親の世代と脱皮しながら育ち行く子の世代の対比は在り来たりかも知れぬが驚くべきバランス感覚の良さで、どちらの描写も全く過不足無い。日常に芸人が介在する浪花の世界に組み込まれた親子が全くあざとくないの…

男はつらいよ 知床慕情

★★★★ 1993年1月31日(日) 日劇会館 当書きされたと思しき三船が有りそうで実は映画で余り見ない日本親父のスタンダードを体現して絶妙。そう来れば寅が後景に退くのも戦略的にも納得できるが、常連竹下のマドンナ起用が奥ゆかしく後景感を払拭しているのも良…

男はつらいよ 寅次郎純情詩集

★★★ 1993年1月31日(日) 日劇会館 京マチ子という超弩級のマドンナを迎えたにしては余りにミスマッチだし食い足りない展開。同系若尾文子も使いこなせなかった山田の弱点が露呈。檀ふみで茶を濁さざる得ない序盤が無駄で虚しい。(cinemascape) kenironkun.hat…

男はつらいよ 寅次郎の青春

★★★ 1993年2月28日(日) トビタ東映 無駄に回数を重ねたゴクミシリーズも方向性を決めかねルーティーン展開に収束。相変わらずの寅の逃げ腰も最早笑う気も起きず斜陽感が横溢する。それにしても永瀬の早朝の船出シーンの傑出した情感。こういうのがあるからこ…

男はつらいよ 寅次郎と殿様

★★★ 2002年10月4日(木) トビタ東映 毎度お決まりの寅の片恋話でもたなくなった果てのアラカン登用としてものり平の絶妙のサポートも冴えてシリーズ中屈指の至芸を見せる爺コンビ誕生と相成った。寅の拗ね様も心地よい論理性を維持している。(cinemascape) ke…

おこげ

★★★ 1993年3月14日(日) 天六ユウラク座 おこげというポジションが不可避の選択なのか止むを得ずなのかを明確にしない限り主人公の清水には誰も肩入れ出来ぬだろう。それでも水準作と思えるのは男同士でハードに乳繰り合う2人の役者が不憫でありつつ気持ち悪…

お気にめすまま

★★★★ 1993年3月14日(日) ホクテンザ1 ニコルソンの尖ったキャリアの中で異彩を放つ弛緩コメディ。くだらない脚本だけに盟友ラファエルソンが監督でなければ出なかったであろうと思われる。そういう意味でプレミア級のレアムービーかもしれない。しかもバー…

男はつらいよ 寅次郎夢枕

★★★★ 1993年5月5日(水) 日劇会館 マドンナに言い寄られて寅が逃げるパターンの初作だが、このパターンの方が切ない。橋の上での煮え切らなく遣りきれない会話が明晰なストーリーを要求する観客の思惑とは逆説的に山田洋次の真骨頂を表出してしまう。『口笛』…

続・男はつらいよ

★★★ 1993年5月5日(水) 日劇会館 シリーズ中でも水準高く、ふられシーンも痛切なのだが、江戸っ子の寅のお袋に浪花言葉の蝶々ってのが違和感を禁じ得ない。夢想の世界の寅さんに現実のシビアさを割り込ませる山田流はテイストの範囲でよく、これは本質に関与…

男はつらいよ 柴又より愛をこめて

★★★ 1993年6月6日(日) トビタ東映 低迷期には何をやっても上手くいかないという悲哀感を自虐にまで転化し得たら新たな地平が開けたかもしれないのだが、栗原小巻では何を付加し得ようもない。あけみこと美保純ちゃんをこそ最前線に駆り出すべきであった。(ci…

男はつらいよ 寅次郎恋歌

★★★ 2003年2月4日(火) トビタ東映 池内淳子を口説く寅の台詞はシリーズ中出色の心情の吐露で、そうとしか言えない寅の身上に泣ける…が、結局逃げちまうので見る者は心のやり場に困る。同一ネタを4回に渡り繰り返し4回目で本物に転化させる脚本の巧みさ、森…

男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日

★★★ 2003年8月21日(木) トビタ東映 いくら流行とは言え寅次郎とマドンナのジョイントとしては俵万智は機能すべくもなく「やむを得ず 大学の講義で バカ話」するのが最大の見せ場とあっては三田佳子が気の毒にさえ思えてきた。多少はしんみりするのが救い。(c…

オーソン・ウェルズの オセロ

★★★★ 1993年12月12日(日) 京都朝日シネマ2 カメラマンの交替を余儀なくされ間断しながら4年に渡った撮影と挙句に短縮カットされ喪失されたフィルムの怨念が歪な画面から滲み出ているようだ。統一感を欠いたしっくり来ない出来なのだが、随所て突出する多く…

男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎

★★★★★ 1992年8月2日(日) 日劇会館 畸形要因を廃したシリーズのベーシックエッセンスの純粋形態。竹下景子という無色リアクター相手に渥美の芸も肩力が抜け伸びやか。それでも山田演出が搾り出した駅シークェンスでの2人の別離。そのつましやかな想いの錯綜…

男はつらいよ 寅次郎の休日

★★★ 1992年8月9日(日) 日劇会館 寅どころか満男さえも脇役に甘んじるゴクミシリーズ2作目にして彼女1本かぶりのお話なのだが、それが又何ともありきたりのファザコン内容で、狼狽するだけの唐変木満男に鬱憤が蓄積し寅は寅で夏木マリから歯牙にもかけられ…

男はつらいよ ぼくの伯父さん

★★★ 1992年8月2日(日) 日劇会館 ここまで寅の恋の一線からの撤退を明快に呈示しちまって、代替が半端な満男の恋シリーズってんじゃ山田洋二も誠実味を欠くってもんだ。出演者皆歳喰って侘びしさだけが募るってのにはんちく野郎の半端な行動が輪をかけるって…

男はつらいよ 寅次郎恋やつれ

★★ 1992年8月15日(土) 日劇会館 冒頭のエピソードでいきなりメルトダウンさせられ、鬱屈した感情は宮口偏屈親爺の登場により更なる暗黒へと誘われる。神聖小百合イズムを貫徹する為の物語は寅や寅屋の人々と真の感情交錯を産むべくもなく上っ面を流すだけだ…

男はつらいよ 寅次郎の告白

★★★ 1992年8月15日(土) 日劇会館 嘗て描かれたわけでもない何かを十全すぎるほどに観る者に納得させてしまう作劇の妙と、吉田日出子と渥美の掛け合い。彼女こそが、もしかしたらリーズ最高のマドンナに成り得たかもしれない…とまで思わされるダルな満男の恋…

男はつらいよ 寅次郎真実一路

★★ 1992年8月15日(土) 日劇会館 浮世離れた世界の住人だから成立する物語も証券会社の会議室でバナナのお土産ってんじゃ太平楽過ぎで痛々しい。これがサラリーマンについての山田流一考察だとすれば現実との認識ギャップに欠伸でも出そうだ。甘っちょろ過ぎ…

オアシス

★★★★★ 2005年2月25日(金) リサイタルホール この世には圧倒的に美しいものと小汚いものがある。越境を恐れ同一地平でたゆたう者は美しいものの価値に永久に気付くことはない。そして、それに気付けば、決して適わぬ想いも「心の温もり」が適えてくれるかも知…

男はつらいよ 寅次郎忘れな草

★★★ 1992年8月16日(日) トビタ東映 当て書きされたらしいリリーって役は浅丘ルリ子あってのものって事をつくづく感じるのも事実だが、お嬢さんの蓮っ葉芸的な無理感がなくもない。夜汽車の窓から見える遠い家の灯りに寄る辺ない1人旅の孤独が際だつ。その連…

男はつらいよ 寅次郎物語

★★★★ 2005年3月18日(金) トビタ東映 疑似家族形成の過程が性急で少し嘘臭いが、子供の親探しとマドンナとの絡みが巧みに配置された展開が極めてバランス良い。刺身の端に甘んじた秋吉ではあるが正面から寅に迫る女っぷりには山葵が利いている。受けた渥美も…

オーシャンと十一人の仲間

★★★ 1992年8月25日(火) シネマアルゴ梅田 シナトラ一家というものに対しての慣れ親しんだ予備知識が無い分楽しめないのだろう。映画は犯罪のトリッキーさには殆ど依拠していない。従ってラストシークェンスの傑出に比して他は凡庸としか思えない。シャーリー…

男はつらいよ 純情篇

★★★ 1992年9月5日(土) サンポードアップルシアター どうにも山田がマドンナを持て余しおっかなびっくりな生半可さで、寅の想いは発露さえ儘成らぬ体たらく。代わりの博の独立騒動とかも又楽しいが、添え物扱いの若尾がやはり気の毒。序盤の宮本と森繁のサイ…

男はつらいよ 望郷篇

★★★★ 1992年8月29日(土) サンポードアップルシアター 渡世人稼業の哀感を描く前段と、後半の東京でのルーティーン失恋譚が各々しっくり調和して完成度と言うならシリーズ中1・2を争うのであろうが、大きな破綻もなく完成され過ぎてる一方突出したものもな…

喜劇 “夫”賣ります!!

★★★★ 2021年11月22日(月) 新世界東映 女の方からグイグイ来られる。モテない男の願望かもしれませんが、こういうのに俺は弱いんです。もちろん、来る相手にもよるんですが、今回それは佐久間良子ですから。ちなみに俺は彼女のことを、今でもよく特集上映さ…

鬼の棲む館

★★★ 2007年1月20日(土) 日劇会館 骨格は単純で良いにしても、淫猥と高潔の対決は余りに何の捻りもなく、しかも、新珠は吹き替えヌードで興を削ぎ佐藤は腹に一物有り気で胡散臭い。高峰をもっと掘り下げれば違う目もあったのではと思う。宮川カメラは唯一パ…

ONODA 一万夜を越えて

★★★★ 2021年10月21日(木) TOHOシネマズ梅田6 小野田さんがルバング島から帰還したのは戦後30年近くを経た1974年。俺が小学生の時だったが、その2年前にグァムから帰還した横井さんに比べて印象が薄かった覚えがある。メディアにも頻出した横井…

オー!スジョン

★★★★★ 2021年9月20日(月) シネヌーヴォ 反復のエクリチュール。 同じ物語を見方を変えて2度繰り返す。ホン・サンス近年の「正しい日 間違えた日」でも使われた叙法である。 男から見たものの見方と女から見たそれは違う。男は簡単には楽観的になれないし…