男の痰壺

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THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女

★★★★ 2020年11月26日(木) TOHOシネマズ梅田6

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香港を主舞台とした中国映画って点で見るものにはどうしたってある種のバイアスかかかる。民主化を弾圧しとる手前らが何いけシャーシャーと素知らぬ顔して撮っとるんじゃってことなんですが、しかし、そこに現実に暮らす人たちには、そういう香港のアイデンティティVS中共の思惑とは関係ないリアルが確実にあるんだってことを知らされる映画だ。

メディアが報じる言説とは違う俯瞰的な見方を改めて考え直させらた。

 

深圳に住み香港の女子高に越境通学する女子高生の話である。邦題から受けるイメージは、えっちらこっちら歩いて越境してる感じだが、電車通学です。

 

彼女の母親は友人を家によんで連日、徹マン三昧で、男を連れ込んだりもする。当然、娘は母をガン無視状態。

離婚した父親が香港で、工場みたいなのをやってるようだが、そんなに羽振りがいいわけでもない。それでも、母娘の生活費は彼が出してるのだろう。で、彼女は小遣い稼ぎに精を出す。

 

総じてこの映画、主人公のバックボーンが、精緻にリアリティをもって描き込まれており、本チャンの犯罪に纏わる挿話が、ガキの火遊びめいて収束することも良しとされる。

それだけ、状況にまつわる描写が分厚いのだ。

 

スマホ密売グループの男と主人公が、夜、高台に登り香港の夜景を見る。

1997年、返還直後の香港を舞台にした「メイド・イン・ホンコン」から20余年、ある種の映画的シンメトリーに彩られた、中共の独裁と統制が本格化しゆく香港の街を彼らは見る。

監督のバイ・シュエの思いは俺にはわからないが。

 

ガキの火遊び程度の顛末だが具体性に富んだ環境描写に刮目させられる。中共による香港民主派弾圧報道の他所で生活者には生きてくことが第一義。返還直後の『メイド・イン・ホンコン』から20余年、高台から見渡す街並みは変わらぬように見える。それが希望。(cinemascape)

 

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