男の痰壺

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ホモ・サピエンスの涙

★★★★ 2020年11月20日(金) シネリーブル梅田1

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ロイ・アンダーソンの映画は、前作「さよなら人類」を見ただけだが、毎回、こんな感じなんやろなと思わせる。ちょっとした小噺というかコントというかの集積で、しかもオチは無い。

 

2つ目のエピソードで、昔の知人と街で出会ってガン無視されるおっさんが出てくる。彼は昔、その知人に不義理をしたとかで困惑する。そして、そのおっさんが、中盤のエピソードで再登場したとき、悩み抜いた彼は死にかけている。

 

全般にオフビートな可笑し味が塗されいるのだが、概ねの登場人物は見てくれとは違い深い懊悩の縁にいる。そして、時にそれがとんでもない地獄の片鱗を垣間見せるのが、この監督の真骨頂だ。

 

おんなじことばっかりやっていて、見てる方は飽きがきそうにも思えるが、俺は多分、何作見ても飽きない気がする。

それは、徹底的な画面の作り込みと、シーンが全て固定のミディアムのワンショットというスタイルの一貫性による。

そう書いてて俺はふと、日本にもそんな人いたよな、と小津って名前を想起するのだ。

 

オチないオフビート小咄の連鎖がところにより連関する隙間から殺戮の近代史の地獄絵図が立ち登る。概ね懊悩する人の話だがバカ陽気な挿話が意表を突いて現れる。土台人の悩みなんて傍から見りゃその程度。来るべき終末には為す術もない。凄まじいペシミズム。(cinemascape)

 

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