男の痰壺

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KCIA 南山の部長たち

★★★★ 2021年1月23日(土) シネリーブル梅田2

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何とか悪い流れを断ち切って、あるべき方向に変えたい、ともがいてもどんどん状況は悪くなっていき、挙句はのっぴきならない顛末を招いてしまう。

いくつかの任侠映画の達成を思わせるし、現在放映中の大河ドラマ麒麟がくる」も連想してしまう。悲劇の結末へと突き進む単線構造の骨太さを感じました。

 

【以下ネタバレです】

山場が2つある。

主人公の旧友でもある前情報局部長を謀殺するパリのシークェンスと終盤の大統領暗殺であるが、この大きな山場を直線的に貫くように物語が加速的に展開するのが良い。

 

かつては清廉の志をもって共にクーデターを成し遂げた大統領が年月を経て我欲にとらわれ変質してしまった。意見をするが彼は聞く耳をもたない。思い余って…。

って書いてて、先述した「麒麟がくる」とあらためてダブりますなあ。主人公の情報局部長が光秀で大統領が信長、警護室長は秀吉ですわ。大河も含めてTVドラマをほとんど見ないんですけど、たまたま見た染谷の信長に惹かれて見ておりまして、まさに今佳境にさしかかってるんです。って脱線しまくりですが。

まあ、古今東西、権力を得た者をめぐる歴史は、こういう帰結に至ることが間々あるってことなんでしょう。

 

大統領のモデルとなったパク・チョンヒは前大統領パク・クネのお父さんだそうです。映画の中では、どうしようもないバカたれとして描かれているが、ムン・ジェイン政権下の韓国では、前政権を否定するのが常であることを考えるとやむを得ないか。でも、彼は戦後復興ままならない当時、日本からの賠償金をもとに漢江の奇跡と称される韓国経済の一大復興を演出した立役者でもあるんです。

 

主人公が、スーパーマン的に動じない男でないのもいい。だんだん大統領から疎んじられハミゴにされる。代わりに取り立てられる警護室長へのジェラシー。なんとなくヤオイっぽい。

 

どんどん状況は悪くなっていき後戻りもできないという展開が終盤とラストの2つの山場を直線的に貫く。苦楽を共にし戦ってきた同志を2度にわたり手にかけることが、ホモソーシャルな4角関係のなかのジェラシーに基づく点を執政への正誤判断と併置して描く。(cinemascape)

 

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