★★★ 2022年8月24日(水) シネマート心斎橋1
「欲望の翼」「花様年華」と3部作を為すものらしい。トニー・レオンを軸に据えて、「欲望の翼」から同役名でカリーナ・ラウ、「恋する惑星」のミューズ、フェイ・ウォン、新規加入組として中国からチャン・ツィイーとコン・リー、日本からキムタクを迎え入れている。まさにWKWキャリアの総決算的な気合いと趣きです。
が、なんやかんやで、あーでもないこーでもないと撮影が5年にも及んだらしく、その経緯は「楽園の瑕」を思わせる。そういうのって往々にしてロクなもんにならないのだ。
内容的にはトニー・レオンの恋愛遍歴3題噺で、そこに、フェイ・ウォン&キムタクの挿話とトニーの書く小説の話が絡む。まあ、どれも出し殻感は免れない。「欲望の翼」「恋する惑星」「花様年華」といった高純度の傑作のエキスを再度絞り出そうとするが、どうしようもなかった感じだ。特に「2046」なる地獄だか天国だか知らないが最果ての異界みたいなのから唯一帰って来たキムタクをめぐる小説内の挿話は生硬で緩い。
結局、この映画で唯一の見どころはツィイーちゃんに尽きるのではと思う。よくあるツンデレ女なんだが、為す術なく堕ちていってしまう哀しみを体現して余りある。生一本な直情型を旨とする彼女のキャリアの中で異彩を放つ作品なんじゃなかろうか。
小悪魔的なツンデレを演じ予想外にコケティッシュなツィイー1本で押せば良かったのにカリーナ、コン・.リーの挿話が余分で散漫化。「2046」に託したカーウァイのこの先行き止まり感は空転する。総決算の意欲が煮詰まって自壊した趣き。(cinemascape)