男の痰壺

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薔薇のスタビスキー

★★★ 2022年9月14日(水) テアトル梅田2

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フランスの一大疑獄事件を扱ったベルモンド自身の企画だそうで、脚本に「Z」や「告白」のホルヘ・センプランは良いとして何故監督にロマン主義アラン・レネを選んだんでしょう。コスタ=ガヴラスとかの方が良かったのに。

食い合わせの悪いベルモンドとレネは互いの良いところを相殺し合って、結果、印象に残ったのは衣装と美術と音楽だけのような気がする。

 

嘘八百の公債をバカスカ印刷して金を湯水のように手に入れて贅沢三昧の日々。詐欺の珍しくもない手口だが、スタビスキーは政界にも金をばら撒いてたのでなかなか露見しなかった。そういったポリティカルエコノミーな切り口は皆無といっていい。トロツキーの亡命と放逐が最初と最後に置かれるのだが、時代を表象するだけの意味しか感じられません。

 

仏政財界を跨いだ一大疑獄事件へのポリティカルアプローチにレネの関心はナッシングで只管にヌーヴォ・ロマンの成れの果て的な豪奢なセットと衣装をつぎ込んでソンドハイムの音楽に塗していく。幻影の国から片足出たボワイエの悲哀のみ胸を打つ。(cinemascape)

 

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