★★★★★ 2018年12月22日(土) プラネットスタジオプラスワン

良い意味で枯れたのだと思う。
それまで、グレース・ケリーだティッピー・ヘドレンだと尖がったパツキン・クールビューティを常用してた。
それが、今作では主要女性キャストは、お世辞にも美人とは言えない。
だが、人の好さそうな女性ばかり。
一方で、それまでとは違ってオッパイどころかアンダーヘアも平気で出す。
そういったサバケ方が構成にも顕れ、残酷とユーモアが両極に振り切れてシュアそのものだ。
走るトラック内でのタイピン探しのシークェンスで指の骨が折れる音。
警部の奥さんの見るからに不味そうなフランス料理。
あたりが両極の白眉だろうか。
どんどん逸脱する話の流れもふくめて、やっぱりヒッチはものが違うとあらためて思った。
それがエスプリの極致のようなラストにピタッと収まるのだから堪りません。
撮影の名手ギルバート・テイラーは唯一のヒッチとのコラボだが、やっぱ素晴らしいの一言。
両極に振り切れる残酷と諧謔がヒッチ枯淡の境地とギル・テイラーのシュアな撮影のもとで熟れて並存している。逸脱を繰り返した物語がエスプリの極致のような落しどころにピタリと収まる快感。アップ使いの衝撃がトラックバックの詠嘆に連なるケレン。(cinemascape)