男の痰壺

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春江水暖

★★★★ 2021年2月27日(土) テアトル梅田2

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グー・シャオガンという新人の長篇デビュー作で、撮影に2年をかけたという力作である。

力作とは思いますが、影響を受けた監督にエドワード・ヤンホウ・シャオシェンジャ・ジャンクーの名前を挙げている通りのそういう映画だと思う。

「牯嶺街少年殺人事件」とか「非情城市」とかが内実が訴求する必然としてあのフォルムに至ったとすると、こちらはフォルムに合わせて内実を組み立てたとでも言おうか。

同じような印象を、ビー・ガンやディアオ・イーナンといった中国の若手注目株の作品にも感じるんです。

 

台湾の2人が、近代史に於ける政治と市民の断ちがたい関係を嫌が応にも表出してしまうのに対し、こちらは、急速な近代化による生活の変容が背景となる。結果、お金の話ばかりとなる。それはそれで悪いわけじゃないんですが。

 

水墨画が監督の念頭にあったらしい。素晴らしい情緒が随所に見られる。しかし、デジタルの平板さは覆いようがない。

 

中国の急速な近代化による生活の変容が背景にある以上お金の話ばかりになり、政治と市民の断ち難い背景がフォルムを訴求したヤンやシャオシェンの表層的上書き感。しかし、この長回しや絵画的な絵面の深みはどこかアンゲロプロスに近似していく。(cinemascape)

 

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