★★★ 2021年9月5日(日) 大阪ステーションシティシネマ2
火山か噴火するだけの映画だったら見る気もなかったんですが、加えて北の核弾頭を奪取するというポリティカルな要因が加味されるってんで食指が動きました。
韓国という国にとって、というより朝鮮民族にとって、南北分断とは国際間のパワーゲームに強いられた民族の分断であり、これはもう悲劇というしかないわけだが、こと韓国映画のエンタメ分野においては、天上天下唯我独尊のモチーフだろう。「シュリ」、「JSA」といった作品が起爆剤となった2000年代以降の韓国映画の隆盛は少なからずこのモチーフに負っている。
本作でも、イ・ビョンホンの北工作員を韓国陸軍が拉致してICBMの格納庫まで案内させるという行程がメインとなっており、その背景として点描される北の惨状が興味深い。そこでは、かつての将軍様マンセーの指揮系統はもはや存在しない。ビョンホンが指揮を仰ぐのはゴロツキのマフィアと化した一隊で資金源としてのICBM争奪に血道をあげるだけ。
北のマフィアと韓国部隊と米軍がタイマーが起動した核弾頭を挟んで3竦みになる構図は本篇の佳境である。
こういった北の描写の変化は紛れもない韓国から見た北の体感実情なんだろう。
冒頭の第1次噴火に於けるソウル市街の崩壊絵図もかなりの出来だが、エメリッヒのそれと比べて未だ単調の誹りは免れない。
何より余りの大雑把な作戦は、うそくせーの一言だが、マ・ドンソクの筋肉脳がそれを発動することで、もはやどーでもいいかとなるわけである。
計算されたキャスティングであろう。
火山噴火のカタストロフや抑止の為の北ICBM奪取などポリティカルな要素もあるが、結局はビョンホン・ジョンウ2枚看板のベタな侠気対決に収斂される。しかし、統治機能も失われた北で暗躍するマフィアや米軍介入の肌感覚のリアル。3竦みは佳境。(cinemascape)