男の痰壺

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キングメーカー 大統領を作った男

★★★ 2022年8月24日(水) シネマート心斎橋

昨今、韓国映画の一大ドル箱ジャンルになってきた自国近代史を題材にした一篇で、その描写の厚みを担保する撮影・美術パートの高品質はあらためてすごいことだと思わされる。

 

金大中の若い頃の話を題材にしているらしいが、役名はキム・デジュンならぬキム・ウンボム。彼が野党の民進党ならぬ進民党の党首選=大統領選候補に勝ち上がるまでを描いた映画。

なのだが、これがどうしたって小粒な話の感は免れない。だって、今の日本でも立憲の党首選なんて誰が興味あるかいって話で、やるなら、与党の保守勢力を打ち破るとこまでやってほしい。

 

だいたい、どこの馬の骨ともわからない男がやってきて応援させてほしい、と。そんなやり方は生ぬるい、と。それは、勝つためには汚いことでも何でもやるって事です。まるで企業ドラマの論理だ。コンプライアンスのコの字もない時代の話。

最初はそのやり方が上手くいってたのだが、やがて空転を始める。そして、男は去らざるを得ない。

 

この男の出自含めて映画はあまりちゃんと描きません。ここがやっぱり弱いと言わざるを得ない。脱北者ということで、自身が陰から出て日の当たる選挙に打って出たいのだがウンボムはなかなか了承しない。その辺の悲哀というものを、もっと真ん中に据えて欲しかった。でないから、その程度の男ってことで終わってしまった感がある。

 

ああ、それにしても日本でも、こういうポリティカルな題材を骨太にやろうって奴は出てこないのかよ。

 

何処の誰やら出自不明はサスペンサブルな導入としてありだが彼の内面への切り込みが最後まで手緩く感情の寄せ場がない。理想や理念だけでは選挙は勝てない。でもそれが無きゃ所詮は局面打破の軍師止まり。じゃあ何故この男を題材にしたかの解は結局見えない。(cinemascape)

 

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