男の痰壺

映画の感想中心です

さらば十八番 そして迫り来る焼け野原

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✳︎これは極めてリージョナルな話題です。

 

初めて大阪は天六の中華料理店「十八番」に行ったのは30年ほど前のことだったと思う。その頃、天六には「天六ユウラク座」と「ホクテンザ」という映画館があって、そこで映画を見に行った帰りにたまたま立ち寄ったのが最初だった。店内は繁盛していたが、飛び交う会話を聞いてる限りパチ狂の溜まり場めいていたと思う。大半の客が半チャンラーメンを注文していたが、400円と激安だったからだろう。帰りの電車賃と飯代残して注ぎ込まずにはいられないギャンブル狂にとって400円はありがたかったはずだ。ちなみにこれは30年経った現在も400円です。俺は「牛肉とニラと卵の炒め定食」ってのを頼んでその美味さに驚愕した。昨今の食に対する関心の先鋭化は未だない時代にオイスターソース風味のそれは街場の中華屋のレベルを超えていたと思う。「天六ユウラク座で映画」→「十八番で飯」というのは俺の中でワンセットになっていった。

しかし、やがて、天六ユウラク座は閉館し、俺自身も転勤で大阪を離れたりで十八番のことはきれいさっぱり忘れていたが、会社が潰れて大阪に戻って天六の近場にある会社に行くことになり、十八番のことを思い出す。久々に行った店は少し南に店舗を移転し広くなって盛大に繁盛していた。客層もやさぐれた野郎どもだけでなくサラリーマンや土日にはファミリー層も取り込んで拡大していた。

 

それから20年。折にふれて行っていたが、先日突然に閉店告知がなされた。人手不足と後継者難だと。本当のところはわからないが人手不足なら昨今の状勢下仕方ねえと思う反面、労働人口の急速な減少により日本を覆う行き詰まり感がよいよ当たり前だった日常を直撃しだしたのを感じる。お為ごかしの少子化対策なんて10年〜20年遅かった。本当に劇的な何かを今やらないと日本は焼け野原になるだろう。

十八番の閉店は終わりの始まりの一端かもしれない。