男の痰壺

映画の感想中心です

溺れるナイフ

★★★★ 2016年11月12日(土) TOHOシネマズ梅田3
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和歌山が舞台ということで中上健次が引き合いに出されるのだが、正直読んでないんでわからない。しかし、この映画のテイストの粘度に70年代の映画「青春の殺人者」を鑑賞中連想した。さすれば、その映画の原作が中上「邪陰」であった。
出会いのシーンの編集に惹かれた。禁泳区で泳ぐ菅田に小松が出会うのだが、その泳ぐ彼の波間に見え隠れするショットに対応する小松のリアクションショットが無い。ちょっとこれは大仰に言えばゴダールの「勝手にしやがれ」以来の常識破りのモンタージュで驚いた。下手とは思わなかった。
神話世界を絡ませ強引に独走する世界観だが、肝心の火まつりを契機に急激に凡化してしまう。
堕ちた虚像という下世話な価値観だが、それさえも突き詰められない。
にしても、このゴリゴリした演出は今後注目すべきだし、山戸結希という名前は記憶に値するだろう。
評価が高いジャニーズ重岡大毅も良い(カラオケシーンが秀逸)が、驚いたのは小松菜奈だ。マグロ女の印象しかなかったが、初めて血が通った演技を見せている。地団太踏む仕草なんて可愛くさえある。
 
泳ぐ彼に彼女が出会うリアクションショット無き常識破りモンタージュの粗削り感。神話世界を絡ませ強引に独走するが急速に凡化し堕ちた虚像の下世話な価値観さえ突き詰められない。それでも尚ゴリゴリ演出は今後注目すべき。小松はマグロ女の印象を払拭。(cinemascape)