男の痰壺

映画の感想中心です

吸血鬼

★★★ 2018年8月18日(土) プラネットスタジオプラスワン
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カール・テオドアドライヤー。
映画史的に評価が高い監督だが、どうもしっくりこない。
俺と相性が悪いんだろう。
ずいぶん昔に「裁かるるジャンヌ」と「奇跡」を見てるが、どっちもしっくりこなかった覚えがある。
 
この映画も評価が高いが…。
吸血鬼といっても血を吸いません。
 
 
て言うか、吸血鬼本体はほとんど出てきません。
手下である医師とその下僕がメイン。
旅の青年と彼らが対決…するようなしないような。
そんな話です。
 
オリヴェイラの「アンジェリカの微笑み」を想起したが、元ネタはこれだったんじゃないだろうか。
青年が寄宿する宿の女将や、その会話の即物的で感情移入の余地がない雰囲気。
どことは言えないがどこかが変っていう世界観。
そういう部分はいいのだが、禍々しさにまでは至ってない。
それは、やはり肝心要の怪奇で幻想的な描写の風化によると思われる。
 
有名な青年が死んで棺桶に入れられ運ばれる主観描写。
棺桶から見た仰角の街並みの移動だが、正直今となっては凡庸。
医師の最後は檻の中に閉じ込められて粉まみれの刑だが冗長。
吸血鬼の正体は、怖そうに見えないおっさんだったが、杭を刺されて骸骨標本。
 
唯一、歩いてきた影のようなものが下僕の傍に立ち止まると下僕の影になる。
ここだjけは良い。
 
即物的で感情移入の余地がない会話が世界を孤絶させその異郷感は禍々しさ一歩手前なのだが突き抜け切れない。ジャンルムービーの予断がそうさせるから。棺桶視線による仰角移動の街並みの陳腐や杭打ちの哀れ白骨標本化のトホホや悪漢医師の粉塗れの刑の冗長。(cinemascape)