男の痰壺

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蜘蛛の巣を払う女

★★★★ 2019年1月14日(月) TOHOシネマズ梅田3
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何の因果か知らないがスウェーデン版3部作もフィンチャー版も見ている。
が、俺は、このリスベットという不幸な生い立ちでパンクヘアでピアスでタトゥーで小柄でレズビアンフェミニストで天才ハッカーな女の物語をそんなに好きなわけではなかった。
4作とも新世界の映画館で何かを見に行った併映で見ている。
なのに、今回ロードショーで見る気になったのは監督が「ドント・ブリーズフェデ・アルバレスだったから。
低予算のジャンルムービーを、そんなに多く見てるわけでないが、それでもここ1,2年で見た中では彼と「ジェーン・ドゥの解剖」のアンドレ・ウーヴレダルが筆頭に演出力があると思うのだ。
 
期待に違わぬ出来といっていい。
これは、007やM:IやJ・ボーンあたりのシリーズの上出来部類に匹敵する。
何かを巡って争奪する物語ってのがシンプルで良い。
昨年のM:Iフォールアウトもそうだったが、古式床しい映画の伝統に立脚した王道の佇まいがあるから。
 
シークェンスは各々圧倒的な画力で閉じられる。
屋敷から雪原に身を投じた幼いリスベットがどこまでも走り去る遠景。
警察の追跡に追いつめられたバイクが湖に跳躍して氷った湖面を走り去る驚愕。
敵グループに追われかわした可動橋上で対峙する黒の姉と赤の妹。
ラストのプロローグと対置される妹の落下。
一歩まちがえれば気障で鼻持ちならない演出だが、そうは感じなかった。
地に足がついているからだろう。
 
まあ、言い出せは、んなアホなとかいくら何でもっていうところもある。
それでも、あの遠隔射撃みたいなアイデアの斬新さが帳消しするだろう。
 
人類壊滅兵器を巡る争奪戦として『フォールアウト』と対置する好篇で原ミレニアムからの逸脱も宜なるかな。シークェンス締めの画力に充ちた演出は姉妹対峙の架橋での白黒赤3原色配置で頂点を極める。泥臭い親子因縁話も北欧の清冽な冷気の中で説話化された。(cinemascape)