★★★★★ 2022年7月日(木) 大阪ステーションシティシネマ7
おそらくフィリップ・シーモア・ホフマンの息子が主演に適う年齢に達したのがPTAの心を突き動かしたのだろう。キャリア初期の「ブギーナイツ」と同じ70〜80年代を背景にした思春期のキャリア盛衰譚であり、多彩な人物群像は「マグノリア」的な豊穣さを併せ持つ。若い2人の恋の顛末は軸である一方で狂言回しみたいなもんだ。
奇矯な登場人物群は
・ガキ嫌いなTVショーの人気女優
・ウォーターベッドを売る店主
・面接をする敏腕女性プロデューサー
・大物俳優
・大物監督
・ストライザンドの音楽プロモーター
・ゲイの新進政治家
・選挙事務所の外の不審者
多分もっといたと思うがしんどいのでこの辺にしとくけど、まあ時代の業界大伽藍であります。そういう意味でこれはPTA版「ワンス・アポン・ア・タイム」めいている。
大物俳優がショーン・ペン、大物監督がトム・ウェイツで、この件が篇中もっとも笑えるが、ネットに書かれている情報では、モデルがウィリアム・ホールデンとサム・ペキンパーらしい。「ワイルドパンチ」のコンビでうれしいね。選挙事務所の件は、まんま「タクシー・ドライバー」やし。
しかし、佳境はバーブラ・ストライザンドのプロモーター=ブラッドリー・クーパーが登場する挿話で、「スター誕生」のバーブラの相手役がどうのって楽屋オチはともかく、普通に見えてヤバいキャラもさておいて、クーパーの車をメタメタに壊した彼らが逃げる途中ガス欠でエンストしたバンで坂道を降り続ける長いシークエンス。その何かが終わっていく感です。
青春時代ってのは、都度都度なにかが終わっていくもんだったなあなどとほろ苦い思いがいたしました。
彼女は、大人の男たちにあっちこっちツバをつけてみるけど上手くいかない。ってことで年下の彼のところへ帰ってくるわけですが、まあ、男と女の成り行きなんて案外そんなもんだ。そういう達観した大らかさが良い。
無軌道な出たとこ勝負な宴の時代は終わり足るを知るとこから新たな何かが始まる。PTAが達した思いは夜の静寂の長い下り坂の逆進行に凝縮する。70年代業界の多彩な人物群像は新たな「ワンス・アポン・ア・タイム」めいて豊穣で際立つ役者たちの目力。(cinemascape)