男の痰壺

映画の感想中心です

アパッチ

★★★ 2022年7月16日(土) プラネットプラスワン

アルドリッチの初期作だが、この翌年に傑作「ヴェラ・クルス」を撮ったことを考えると、今一凡庸さは否めない。

 

ジェロニモ投降から始まるアパッチ族斜陽の物語で、1人徹底抗戦を謳う男をランカスターが演じるのだが、どうみてもアメリカ先住民には見えないのがご愛嬌である。脇で出ているブロンソンは馴染んでおりますが。

 

意外だったのが、戦いに戦うみたいな派手な展開はほとんどなくて、戦意の旗を下ろし、彼らのアイデンティティである狩猟の習慣も放逐して農業という営為に目覚める過程を描いていることです。まあ、そういう善きインディアンってのは白人から見た価値観でしかないんですが。

 

終盤で映画は一族の娘ジーン・ピータースを連れたランカスターの逃避行めいてきて、人気のない山奥で初めて種を蒔いて農業ってものを始めてみる。その隔絶された2人の世界の刹那な情感がいい。しかし、追手が迫り、折しも産気づいた彼女を置いて立ち向かおうとするランカスター。見事に実った麦の中を這いずり回る。とまあ、このへんの畳み掛けはダイナミックであったし撮影も良かった。

 

アルドリッチは後年、この大甘な価値観を補正するかのように「ワイルド・アパッチ」を撮っているが未見です。

 

1人抗戦を続ける男が狩猟や戦闘のアイデンティティを捨て時代の流れに懐柔される矛先となる。愛しい女が一緒であればそれも又良しという軟派街道であるが逃避行の世界との断絶感がロマンティシズムの芳香を放つ。それが白人にとっての良き先住民だとしても。(cinemascape)

 

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