★★★★ 2023年8月16日(水) 大阪ステーションシティシネマ10
「クレしん」映画、今更の初見です。
20年前に「オトナ帝国の逆襲」が巷の話題になったとき食指が動いたけど見ることは叶いませんでした。評価がウナギ上りに上がったのが映画館での上映が終わってからでしたから。
今回、なんで見たのか言いますと、空いてる時間に合うのがこれしかなかったからなんですが、それでも脚本・監督が大根仁って知らんかったら見んかった思います。
なんでもシリーズ初CG作だそうで初3D(3Dでやってる映画館ってあるのか?)っつーても今まで見てないから格別な何かもありません。
まあ、大根仁もやりにくかったやろう思います。彼の特質の1つは衒いないエロ視線だと思うんですが、しんのすけの邪心のないエロ志向とはやはり似てるようでも本質水と油。大根としては常に寸止めを喰らわせられてるようなもんだ。
で、代わりに持ち出したのが令和日本の閉塞状況と、そのマイナス因子が吹き溜まりのように集まった若者なんですが、観客のお子ちゃまたちにそんな小難しい話がわかるわけないので、馴染みあるイジメ問題に置き替えられる。このへん仕方ないと思いつつ煮えきれなさを感じました。
鬱屈した若者が能力者に変貌する。この設定は先般見た「イノセンツ」にも通底するもので、終盤に彼がメタモルフォーゼするさまは「AKIRA」の鉄雄みたい。時を同じくして洋の東西で大友克洋の系譜上にある作品が登場したことは興味深いことではあります。
大根の衒いなきエロ視線はしんのすけの邪心ないエロ志向と水油の如く乖離するので寸止めを強いられ、令和ニッポンの閉塞はお子ちゃま達に馴染み深いイジメへと矮小化される。『AKIRA』鉄雄よろしくメタモルフォーゼする青年のフォルムは一応の風穴。(cinemascape)