★★★★ 2018年11月9日(金) 梅田ブルク7シアター1
クイーンにそれほど興味を持ったことはない。
俺が10代のころ、彼らに対して勝手にもっていたイメージは女子に人気のバンド。
まあ、ベイシティ・ローラーズとかそんな類ってもんだろってな感じであった。
それから、年月がたって、TVとかで短髪口髭のフレディ・マーキュリーを見て少し驚いた。
が、それ以上の興味も沸かなかった。
ラジオからは「伝説のチャンピオン」がアホほど流れていた。
その後、フレディがゲイであったことと、エイズで死んだことを聞く。
ブライアン・シンガーが当初の監督として指揮をとったが降ろされたらしい。
彼は、ゲイであったから、題材的にはうってつけだったんだが、おそらくゲイ色にこだわりすぎたんじゃなかろか。
それくらいに、バンド解散後のドイツでの頽廃イメージは堂に入ってるのだ。
まるでファスビンダーの映画を見てるみたい。
ジャンル定型の無名時代のエピソード、ヒット曲生成過程の逸話、有名な事件が浅く網羅される。
そこにセクシュアリティの問題を横軸に配したのは、今年公開の「バトル・オブ・セクシーズ」と相似である。
が、総じて総花的な印象で掘り下げも甘いと感じた。
だが、そういった不満も終盤を費やしたライブエイドの再現で穴埋めされた。
ライブ音源をまるっぽ使いきり、言わば口パクの表層も恐れずにど真ん中から見せきった構成の勝利。
そこには演出のアザとさは全くなくって、クイーンに対する絶対的な敬意しかないみたいだ。
そのピュアさが激しく良い。
ライトファスビンダーなゲイカルチャーを横軸に据え描かれたバンドの盛衰は底浅感も拭い難く孤独要因も甘ちゃんで勝手にしやがれとも思うが、それでも楽曲に対する絶対的信奉が映画の強度を増幅。佳境ライブエイドの徹底は半端なくあざとさの欠片もない。(cinemascape)