男の痰壺

映画の感想中心です

エリカ38

★★★★ 2019年6月11日(火) 大阪ステーションシティシネマ
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投資詐欺ってのが、どうでもいいやって思えてしまうのは、そもそも持ってないもんはサギられるわけないから。
であるから、自称38歳の60幾つかの婆さんが、何億と言う金をサギってカンボジアで若い男と逃避行。
って記憶に新しい事件にも、特に感想を抱かないのであったが。
 
で、この映画も事件の深部や自称エリカの生きざまの解明に迫れたかっていうと甘いと思う。
であるが、それでも俺はちょっと感銘を受けた。
それは、浅田美代子のこの映画に於ける存在の仕方。
 
彼女は、実年齢で63歳だから、顔もたるむし脚の肉も落ちる。
現実に、俺もそういう歳に迫って、そういうのに寛容だし、むしろ若さに固執する方が痛々しいと思っている。
すっぴんで老化をスクリーンに晒すってことに対して、よく言う「捨て身」とか「思い切って」とかじゃなく泰然自若の趣を感じる。
そこに、いろいろあった人生だが、もういいよっていう、映画内のエリカと演じる浅田美代子がシンクロする瞬間が確実に存在するのだ。
生前の樹木希林が、「あなたやりなさい」と後押ししたと言う。
そういう意味で、全てが左巻きになったときに2人が縁側で歌うシーンは万感の思いがこもる。
(相変らず歌はヘタなんですがね。)
 
詐欺の全容にせよ主人公の生き様の解明にせよ今一歩の感はあるが、老いをスッピンで晒す美代子の泰然自若が終盤にはエリカの諦念と同期し稀にみる説得性を醸す。希林との縁側ツーショットは音痴までもが虚実錯綜の催涙装置と化する賽の河原めいてる。(cinemascape)