★★★ 2021年8月15日(日) シネヌーヴォX
中高生の頃、安倍公房が好きでよく読んでたのでこの原作も読んでると思うけど全く覚えてません。
・貧苦のなか縫製の内職をしていた母親が糸になって糸車に巻き込まれてしまう。
・その糸が加工されてジャケツになる。
・ジャケツはネズミにかじられ赤く染まる。
・世界に雪が降りしきり資本家も労働者も凍りつく。
・ジャケツが男を包み彼は解凍される。
・彼は詩人であることを自覚する。
という流れも原作どおりなんでしょう。
原作覚えてないと言っといてなんですが、この映画はそれをまんまトレースしただけに見えてしまう。人が糸になる不条理や左翼的階級観など安倍公房のエッセンスまんまだ。
切り絵という手法による説話性も適合しすぎて意外性がない。
公房を絵解きするのではなく入念にトレースしただけの感がある。疲弊した老母の顛末はサディスティックでシュールだが、階級社会が降りしきる雪に覆われ消失する様は淡いロマン主義的な夢想であろう。切り絵がもたらす説話性が適合しすぎて意外性もない。(cinemascape)