★★★★★ 2020年2月27日(木) 梅田ブルク7シアター2
真冬の夜。降りしきる雪の東北の道を走る車。
思いつめた女と男。ラジオから流れるジェフ・バックリー「ハレルヤ」。
ムーディであります。これでもかってくらいに。
このシークェンスの画がここまでできあがってる時点で、この映画は勝っているとさえ思わせました。
ど真ん中の不倫話で、まあ、不倫が見る者の共感を得ようとしたら、女の亭主がクソ野郎であることが必須なんですけど、これはまんま王道を行っている。
それが、あざといと見ることもできるが、10年ぶりに再会した元恋人どうしが、視線を交わした途端に前置きなしに間髪入れずにヤル。
前戯からインサートを経て余韻の共有まで見せる。
グダグダした腹の探り合いとかはしません。
衝動的な単刀直入さで流れを手に入れたと思いました。
アンチモラルな物語を真正面から描くのに近年の日本映画はほとんど失敗している。
「私の男」なんかはやっぱ、肝心の二階堂ふみが未だガキなのでSEX描写に踏み込めなかったのが決定的な敗因と考える。
この映画の夏帆は大健闘と思う。(おっぱいは見せないんですけどね)
子を捨てる。その生半可ではない決意をした母親の越境感は桐野夏生のハードボイルド性に近似している。原作は違いますが。
視線が交錯した瞬間にスパークする本能や、前戯から挿入を経て後戯に至る充足を真正面から描いて骨太なので、浸り切ったかのような道行の背徳的ロマンティシズムが本物になる。境界を越え引き返すこと叶わぬ最果てまで行くという決意。ハードボイルドの極み。(cinemascape)