男の痰壺

映画の感想中心です

ファースト・マン

★★★★ 2019年2月8日(金) TOHOシネマズ梅田7
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なんだかテレンス・マリックの映画みたいに内省的で静謐なのが案外チャゼルの本質なのかと思う。
劇的な要素にあまり関心がないみたいだ。
であるから、人類初の月面着陸の高揚もそんなには描かれない。
ニール・アームストロング船長ってのが、こういう人物だったってのも初めて知った。
 
1969年の世界同時放送時に俺は8歳であるから、学校から帰ってTVを見ていたが、あまりに単調な場面が続くので飽きて見るのをやめた記憶がある。
1971年の大阪万博ではアメリカ館で「月の石」が展示されたが、ずいぶんと並んで見た覚えがあるが単なる岩っころとの印象しかなかった。
 
映画で執拗に描かれるのは、幼くして病気で死んだ娘の記憶で、彼にとって月に行くことの意味は娘の形見の品を月に置いてくること。
そうすることで娘の記憶は月とともに永遠に彼の中に刻印されるだろう。
そういうアプローチは俺は好きだ。
 
クレア・フォイが妻の役を演っている。
最近「蜘蛛の巣を払う女」で知った女優だが、女女してないのがいいっす。
死んだ娘への拘りから息子たちへの思いに欠ける夫を窘め叱り息子たちと対峙させる。
素晴らしい母であり妻であると思います。
そういった2人が無言で視線をかわすラストは万感がこもって素晴らしい。
 
人類初とか米ソ宇宙戦略の駆け引きは置いといてマリックばりに死んだ娘への思いが内省化していく。客体化するロングはシーンで1、2個しかなく只管にアップで突き詰める度胸がいい。彼の沈航する自我を家族の為に引き戻す女房をフォイが静かに好演。(cinemascape)