★★★ 2025年3月10日(月) シネヌーヴォ
長い間、劇場公開が見送られてきて、TV放映時の「地獄の逃避行」が通り名だったが今回、制作から約半世紀を経て「バッドランズ」のタイトルで劇場公開された。やっとと言うか今更と言うかだが、さすがに耐用年数切れの感は拭えない。せめてマリックが20年の沈黙を破って「シン・レッド・ライン」を撮った20年前くらいに公開してほしかったと思います。
そこまで人格破綻してるとも思えない若者が次々に人を殺していく。一旦殺戮への障壁が取り払われると、もう殺さんでもええ奴まで簡単に殺していく。そういう様は、同工異曲のものを幾つも見てきた現在では、今更にだからどうしたの感が拭えない。
むしろ、シシー・スペイセクの演った女子高生の方が、自分の父親を殺った男にさしたる心理的葛藤もなくついていくのが異様で、こっちを深掘りして欲しかったと思わせる。総じてこの映画、人間探求が淡白に過ぎます。
それでもテレンス・マリックの映像主義的な拘りは、逃避行を理解不能の主体エリアから叙情的な客体領域に解き放ってるかのように取り敢えずは見える。だが一方でその修飾は少なからず論点のはぐらかしめいている気もするんです。
一旦障壁を越えると殺戮は日常となる。それでもテレンス・マリックの映像主義的な拘りは逃避行を理解不能の主体エリアから叙情的な客体領域に解き放ってるかのように取り敢えずは見える。だが一方その修飾は少なからず論点のはぐらかしめいてる気がする。(cinemascape)