★★★ 2025年6月16日(月) 大阪ステーションシティシネマ4

プロジェクトXみたいなもんだろうと、全然見る気なかったんですが、監督が関根光才だと知って、パーソナルな人間探求みたいなことやってた男がソーシャルな群像劇をどう捌くのか興味があり、見る気になった。
それなりには満足いく出来だったと思いますが、限界も露呈した。それは仕方ないとは思います。大状況を描くに突っ込んだ個別のキャラの描写に拘泥してるヒマなんぞないわけですから。それに突っ込むに足るキャラがあったかも疑問だし。
ダイヤモンドプリンセス号が船内でコロナ患者が出て横浜の港に泊まってる映像は脳梗塞か心筋梗塞で入院してるとき見ましたけど、あーこんなんしても遅かれ早かれコロナ広がるやん、と冷めた目で見てた記憶があります。そんときこうやったんやと知る満足はありましたが、それは先述のプロジェクトXで事足りる話です。
関根演出の良いところは、ひたすらに低温基調を貫いたとこでしょうか。日本のかつてのジャンル映画にありがちな、パニックになってギャーギャー大騒ぎしたり、熱血的な口角泡飛ばす激論とか、そういうのあんまりありません。
本部から指揮するチームの総大将(小栗)と船内に乗り込んだ前線隊の指揮官(窪塚)は旧知の互いを◯◯ちゃんと呼び合うことで感情の起伏を抑えて平常心を保とうとしてる。この関係性が本作品で大きな支柱となっていたと思いますし、演じる小栗と窪塚も良かった。
テレビ報道やネットで拡散する医療チームへの批判といった要素も触れられるけど、如何にも中途半端で、そんなことならバッサリ切ってもよかった。例えば1シーンだけ出てくる発熱した東南アジアのクルーがタコ部屋みたいなところに寝かされてる件。「家に帰りたい」と涙する彼女なんかをもっと取り上げても良かったのでは。そんなこと思いました。
「プロジェクトX」的な汎用題材に関根はある程度の作家性を注入し得たとは思う。従来型のパニック映画の温度ではなく低温基調を維持し、その中で本部司令(小栗)と前線指揮官(窪塚)の信頼と意思疎通を抽出した。描き足りないのは仕方ない。