男の痰壺

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N号棟

★★ 2022年5月3日(火) MOVIXあまがさき8

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何かの折にポスターを見て女房が「これ見たい」と言ったのはわからんでもなかった。数ヶ月前に引っ越した築50年超の公団住宅は、住人の大半が老人で饐えた臭いと死の影が蔓延している。廊下ですれ違って挨拶しても住人たちはガン無視で虚な眼を瞬きもせず歩いて行く。

爾来、何かあるたびに「N号棟やあ」とか「N号棟はよ出て行きたい」とか憑かれたように言うので、仕方なく除霊の為に一緒に見に行きました。

 

定番の展開である。若い男女がネットにあがっている幽霊団地を撮影しようって事で出かけて行く。さあ、廃団地の不気味さを満喫しようかと身構えたが、あまりそのへんの造形を愉しませてはくれませんでした。つくづく中田秀夫がまだ好調な頃の佳作「仄暗い水の底から」の団地描写は大したもんやったと今更に思うのであった。

 

のっけから管理人と称する男が出てきて、何しに来たんやと詰問される。咄嗟に入居希望だと取り繕う主人公の女性。この管理人という男が何故か敷地内の路上で野営してるのだが何故そういう設定にしたのか訳わかりません。続いて住人らが出てきていきなり歓迎会だと言う。幽霊団地に住人がいるのも変なら歓迎会への出席を応諾する彼らも変。変を際立たせる為には常識が基底になければいけないのにそれが揺らいでいる。

作り手の常識観の欠如は主役の女性の余りに自己中なキャラにも反映している。それが変だと認識してないみたいでイラつくのです。

 

巷では「ミッドサマー」との類似が指摘されてるみたいですが、そんな事以前の段階で気になる点が多すぎです。

ちなみに女房はけっこう喜んでたみたいですが。

 

微妙にズレてて怖いというのはあくまで常識世界を基底に置いてこそなのであって、本作は作り手のそれがズレてる感がある。設定や主人公の行動規範がズレてはズレの2乗=アホらしい。『ミッドサマー』との被りも言うだけ虚しいジャパニーズホラーのアホ末期。(cinemascape)

 

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