男の痰壺

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アフター・ヤン

★★★★ 2022年10月24日(月) 大阪ステーションシティシネマ

チャイルドシッターロボのヤンが壊れて家族がどうなっていくかみたいな話かと思っていたら、ヤンの内面の記憶(=記録)を見て、あの野郎こんなこと考えてたのかと持ち主が驚愕する話だった。

そこには、彼の持ち主である家族の記憶の他に見知らぬクローンの女性が頻繁に登場し、ヤンは自己の存在を彼女と問い交わす。「アンドロイドはクローン彼女の夢を見るか?」。持ち主が壊れたヤンの記憶媒体をスキャンして断片の画像を見ていくのだが、まるでテレンス・マリックばりの切ない儚さで、俺はこういうのに弱いんです。

 

中古AIロボットとクローンの交流により、前所有者の記録やクローン元の記憶がシンクロして、数秒間の断片的イメージの錯綜として提示される。それは、ヤンが修繕不能で二度と目を覚ますことのない現在と対置されることで追憶として美化されるのだ。

 

クローン役のヘイリー・ルー・リチャードソンはコゴナダの前作「コロンバス」に続く連投。

小津に傾倒するコゴナダの名前の由来は野田高梧だそう。知らなかった。

 

当たり障りなく都合よく役立っていた彼が本当は自己のアイデンティティに関してこんなこと考えてたんやという驚きは、そいつがもう帰ってこないという不可逆性も相俟り男を苛む。未来絵図の有機・無機混在への食傷はマリックばりの感傷に持っていかれる。(cinemascape)

 

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