男の痰壺

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関心領域

★★★★ 2024年6月5日(水) テアトル梅田4

大体予想したような映画で、だからどうしたとでも言いたくなるのですが、何点かは唸らされたところもあった。

大虐殺が行われてる横で、私ら関係ないもーんとばかりにノホホーンと暮らしている。けしからーんですが、見て見ぬふりするのは私ら人間の得意技でして、どっかの国で大虐殺が行われていようが、ご近所さんで虐待が行われてようが、今日の晩飯どうしよかーなんです。この映画のご家族責めたらあきまへんでー、責めるなら己れら責めんかい、と映画の作者は言ってました。(嘘ですけど)

 

いやらしいまでにスタティックな描法を採っており、カメラは固定と人物を定点で捉える緩やかな移動のみでパンニングなんてダサいもんは使いません。屋内を動き回る人物を各所の縦構図で繋ぐあたりは小津みたいだが、如何せん西洋の家はだだっ広いので小津のような運動性は生まれない。つくづく狭い日本の家屋に則した描法であったと思うのです。

 

一家を特定の特権階級ではなく、おそらく庶民の出としたところが秀でており、夫の出世欲と妻の家屋への執着が無理なく見る者に入ってくる。どこにでもいる一家なんです。こんなのは富裕層のクソ野郎どもの話さ、では済みません。

 

特筆すべきは、アカデミーの音響賞を獲った効果音で、常時聞こえてくる収容所からの怒号・悲鳴・銃声・打撃音他もろもろの何か知らぬ音声。近くからなのに遠くの蜃気楼のように立ち昇るそれが、確実に其処にある地獄を顕す。それらをクリエイトした効果マンたちの仕事は本作の生命線だったと思わされます。

 

嫌らしいまでのスタティックな描法だが小津にあった運動性は欠如。だが彼らを非特権階級の庶民の出としたところは秀逸。夫の出世欲と妻の家屋執着が無理なく見る者に入ってくる。更に特筆すべきが効果音。遠雷のようにそれは確実に其処にある地獄を顕す。(cinemascape)

 

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