男の痰壺

映画の感想中心です

ありふれた教室

★★★★★ 2024年6月12日(水) テアトル梅田1

ファルハディの映画になぞらえる向きを見たが、確かに言えてる面がある。人の営為の白黒つけがたい微妙な行為・発言を契機に登場人物がスパイラルにドツボ地獄に陥っていく様が。

 

不寛容主義なるものを謳っている学校だそうで、そんなとこあんのかと思うのだが、物語を転がすためだろう。クラスで窃盗事件が頻発し、クラス委員の男女の生徒2人が呼ばれて教師に心当たりを問われる。そんなん言いたくないという2人に言えないなら名簿で指せと、もう強引だしテキトーで、案の定濡れ衣着せられたアラブ人の子の両親は激怒。

 

ただ、この映画の子供たちは、内向して縮こまらないんです、疑われた子もなんだか元気にやっている。全般に自我が確立されてるように見える。そのへんが我が日本の学校の内向きな陰湿さに自閉していくようなのとは違う気がする。映画だから、なのかもしれないけど。

 

【以下ネタバレです】

恥ずかしながら一般に言われてるのとラストの解釈が違っていました。何かささやかな希望を感じた俺は、誤読してもうたと恥じ入る気持ちになったが、ま、ええかとも思う。少年にとって絶対憎悪の対象である筈の女教師の差し出したルービックキューブ。それは彼にとって見るのも忌まわしいものだった筈。それを一瞬にして完成させて見せた少年に、あーなんやかんや言っても子どもやなー、一生懸命取り組んで完成させる方途みつけたんや、と俺はそう思ったんです。まあ、末恐ろしい悪魔の神童やーってのもそうなんですが。

 

「TAR」でも主人公の秘めたレズビアンの相手が同僚の中にいたわけだが、今作でも終盤で壊れそうに追い込まれた彼女に声をかける女教師との関係が明らかになる。作品世界に奥行きをもたらす設定だと思います。