男の痰壺

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空海 KU-KAI 美しき王妃の謎

★★★ 2018年4月6日(金) TOHOシネマズ梅田5
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まず、何より「闇」が足りない。
バンバンの照明を当てたデジタルでクリアな画面に棲む「魔」はどうしたって薄いのである。
 
前半は「陰陽師」の疑似バージョンだ。
空海&白楽天安部清明源博雅と同じような一種気持ち悪いバディ感で彩られる。
そこで変異が起こるがCGの易さと前述の平板な画面で、まあ薄~いっす。
 
だが、後半で時制を過去に変えて一大転調を遂げる映画は陳凱歌のここ1点の勝負とさえ言える楊貴妃にまつわる描写に冴えを見せる。
演じる張蓉蓉のコスモポリタンな容貌も相まって一寸傑出した造形だと思う。
彼女に対する、玄宗皇帝、阿部仲麻呂、白龍・丹流の切ない尽きせぬ想い。
この徹底的に間尺を割いて描かれる詠嘆は「覇王別姫」のころと変わらない。
 
吹き替え版しか公開されていなかったので見送るつもりだったが、字幕版の上映を機に見にいった。
 
デジタル絢爛による闇の欠如が致命的だが、1点突破で永遠に充たされず届かぬ想いへの共振は陳凱歌の本卦還りを思わせる。疑似『陰陽師』な温いバディ探偵設定は過去に遡及し楊貴妃登壇でハッタリの極北に至る。そのオーラは廉価CGも上塗りするだろう。(cinemascape)