★★★★★ 2017年7月26日(木) TOHOシネマズ梅田5
俺の小学生時代。
TVのスポーツ中継は野球・ボクシング・相撲・プロレスが中心だった。
そんななか、たまたまやってたテニスの試合でキング夫人という名前を覚えた。
夫人という呼称を何故つけるのか違和感があったが、男子でも○○3世とかいう名前で呼ばれる人とかがいて、ああ、テニスってそういうハイソな人のスポーツなんだと思ったのであった。
で、この映画なんだが、賞金の男女格差が8倍ってのが契機となっていて、さすがにダメやろうと、これ又全ての男どもでさえ納得する明確さがいい。
ビリー・ジーンの闘いは納得性があるのだ。
リッグスとの試合なんだが、はっきりと茶番であって、男女の身体能力差を年齢格差が相殺する科学的根拠がない以上、スポーツとしての公正は保てない。
であるが、両者が自分が勝つとして臨んだ以上、また各々が背負って立つ男性女性のアイデンティティが抜き差しならなく肥大化した以上、試合は俄かに茶番劇から脱していく。
映画は、この試合を当時のTV中継と同じカメラポジションで撮ってほぼワンカメである。
当然に、テニスプロがふき替えているのだが、凡庸な監督ならエマやカレルの演技をインサートで入れたいところであろうが見事にワンカメ。
その他、手法面でいうと、超絶アップで切り返すシークェンスが2箇所ある。
ビリー・ジーンと後の恋人マリリンとの出会い。
リッグスが妻から三行半を突きつけられる場面。
どちらも、感情の機微が表情に出てめまぐるしく変化する。
上出来のアクション映画のようだ。
主演2人には驚いた。
ベストワークと言っていいだろう。
納得性あるフェミニズムが気持ちいいし、件の試合も背負って立つ男女のアイデンティティの抜き差しならぬ肥大化を背景に茶番を脱する。超クローズアップのモンタージュは表情の機微を逃さず、俯瞰カメラの試合は迎合的インサートを排す。手法的にも先鋭だ。(cinemascape)