★★★★★ 2020年1月5日(日) プラネットスタジオプラス1
子供のころにTV放映で見た記憶があるが、まったく忘れていた。不安もあったが、見始めてすぐにそんなもんは一掃される。傑作であった。
のっけからフランケンハイマー得意の縦構図がビシバシ決まる。一方で未だ大戦下の雰囲気を残したロケーションがドキュメンタルな臨場感で迫ってくる。
そのモノクロの自在な撮影に俺はちょっと「博士の異常な愛情」級のキレを感じて撮影はいったい誰やねんと思ったが、あんまり知らん人でした。ジャン・トゥルニエという有名作品としては他に「ジャッカルの日」があるくらいの人なんですね。であるから、この映画は小状況の絵コンテの構築から始まり大状況の大構えなドキュメンタリズムに至るまでフランケンハイマーが統御している。たぶんそやろと思う。
通常の大戦下のレジスタンス映画を離れてこの映画の屹立点は2つある。
1つめは大義への逡巡であって、彼らはフランス国民だが生まれてからルーブルなんて行ったこともないし関心もない。であるからルノワールやピカソってなんぞやの世界で生きてきて、その絵の為に命張れって言われて冗談やめんかいの話なのだが、誰かがやろうと言い出す。これが、主役ランカスターの口からでないところがミソで、連帯感と心根にある敵愾心と愛国魂が一瞬で納得させられる。
2つめは、それでも個に集約されるマッチョな対立軸で、仲間を全員殺された男と、仲間から見放された男の世界から孤絶したような対決で映画が締めくくられる。そう来なくっちゃの萌えるドラマトゥルギーで、ここに1つめの大義の虚しさがものの見事に収斂される。すばらしいの一言だ。
序盤の友軍空襲時に見せるランカスターの管制塔から一気に梯子を降りる身のこなしや、終盤での急坂を転げ落ちる役者魂など、スゲー!の一言で、後日T氏とそういったランカスターの身体性について話していると氏は陶酔したような面持ちでこう言った。
「お前ー見た?あれ」
「えっ…」
「ワンカットやぞワンカット」
「はあ…」
それは、破損した給油管を直せと命じられたランカスターが修理するシーンなのだが、鋳鉄を型に流し込み冷やし鋳型から取り出し出来た管口部を管に接続してクレーンで機関車まで持っていって接続するってなシーンで、とにかくランカスターどんだけ練習したんやという手際でマジ熟練を完璧に表現してる。その一連の作業がワンカットで撮られています。
見てるときワンカットってのは俺も意識したように思うのだが記憶の底に隠れておりました。今回だけは見るところ見てる人はちゃうなーって思いましたわ。
価値の理解できないものの為に命を賭する抗戦の連帯と意気地を根底に湛えつつ、それでも個の対決に収斂していくドラマトゥルギーが完璧だが、縦構図とドキュメンタリズムを自在に操る演出とランカスターの身体性も尚等価で映画を成立させる。陶酔の調和。(cinemascape)