★★★★ 2020年3月14日(土) 新世界国際劇場
食傷のきみあるシリアルキラーもんってことで、例によって実在人物だそうで、つくづくアメリカって、どんだけシリアルキラーおんねんと思う。
のであるが、こいつの変ってるのは、逃げも隠れもしないぜ、だって冤罪なんだからを貫き通したところで、自分の裁判で被告でありながら、弁護士を兼任するってな離れ業まで披露する。
よくある普通にふるまってるが何かのきっかけでスウィッチが入りサイコパスの素顔が現れるってのもありません。あくまで普通人に見える。
が、裏では30人以上の女性をぶち殺し、死姦し、首をちょん切って持ち帰り部屋に陳列した紛れもないド変態なのです。
映画は、そういった複雑怪奇な彼の精神メカニズムに迫ろうとはしない。
大体、殺人シーン自体ほとんど描かないのだ。
終盤は、何も知らずに彼と暮らし続けたひとりの女性の視点に重心がシフトする。
ずっと冤罪だと信じて、でも流石に騙されてたんだと気づき、それでも彼自身の口から真実を聞きたい。
その刑務所での面会室で、ガラス越しに示される真実。その1点に全てが集約されるかのような鮮やかさだった。
変態臭を排し変態を描く試みが接見室での硝子文字に収斂される。トリックスターの生成過程に触れず、其奴らは唯そこに存在するのだという諦観。捏造された世界で生きてきた彼女が再生するには知るという通過儀礼が不可欠の要件だった。その1点突破が鮮やか。cinemascape()