★★★★ 2020年3月27日(金) シネリーブル梅田3
監督がブレッソンやヒッチコックや小津に傾倒するシネフィルだってこと以外、ほぼ予備知識ゼロで見たので、見始めてしばらくは、どういう物語なのかが掴み難かった。
幾人かの多様な人物の挿話が並行して描かれるので、PTAやソダーバーグの映画みたいな群像劇かと思ったりもしたが、結局のところこれは、1組の男と女の話なのであった。
そのへんの人物の出し入れの組み方が、シンプルな強度を阻害している。
つまるところこれは、田舎でくすぶってる女の子が外に出て行くことを決意する話なのだが、そこに2つのファクターが加味されて物語は転がる。
1つは棄てるべき田舎が彼女を捉えてやまない。そのコロンバスという町がモダニズム建築の宝庫であるという要因。
もう1つは、偶然に出会った男が、彼女の内的な葛藤の絶妙な解放装置として役割を全うしてくれる点だ。
後者に関しては、男女の関係の微妙な均衡点を映画はすり抜けていくのだが、素晴らしい。
ジャームッシュの初期作に匹敵すると思った。
しかし、前者の建築物への拘泥は十全に画面に刻み付けられたかは疑問。
グリーナウェイやアンダーソンくらいのあざといまでの造形への拘りがあっても良かった。
鬱屈を殺し諦念に至った彼女が男への心情吐露を反復することで自己解放に至る物語でヘイリー・ルーの顔と体型と特定分野への傾倒のバランスがチョウの欲情を抑制し真ダンディズムを獲得させる。ただモダニズム建築の映像定着が淡泊に過ぎ物足りない。(cinemascape)